As 09 「舞い降りた紫炎」
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かる。しかも言葉どおり迷うことなく私を殺せるはずだ。この少女は、私のことなど何とも思っていないのだから。
「私を殺す? ずいぶんと舐められたものだ」
「舐めてはいませんよ……あなたは彼との戦闘の結果、今は本調子ではないでしょう?」
身体ではなく心が……、と全てを見透かしているような少女の瞳にさらに恐怖を感じる。
この少女、私と夜月の関係に気が付いているのでは……いや、気が付いているならば夜月はマークされていたはず。夜月は何度も主の見舞いに来ていたのだから、主の存在がバレていないとおかしい。
先ほどの言葉からして、疑問を抱き始めていたところだったと考えるべきか。夜月に危害を加えてしまったことには罪悪感や後悔があるが、現状に話が進んだ以上は好都合だったと言える。これまでの関係がバレないように振舞わなければ。
「否定はしない。私にも子供を傷つけたことへの罪悪感を感じる良心はあるのでな」
「……良心ですか?」
「おかしいか?」
「そうですね、と言いたいところですが別におかしくはありませんよ。ただ……なぜあなた方は魔力を集めるのか気になったもので。傷つけることに罪悪感を感じるのならば、本当はしたくないはず。それなのに行うということは、とても重大な理由があるはずです」
「……そうだとして話すと思うか?」
「それは思いませんね」
少女は視線を私から夜月へと向けるが、すぐにこちらへと戻してきた。彼に向けられる瞳には感情の色があったが、すでに冷たい瞳と化している。
「話すという選択をするのならば、そもそも彼は今の状態にないでしょうから……そろそろ決めましょうか。剣を交えるか交えないかを」
「それもそうだな……」
このまま無駄話をしていれば管理局に包囲されてしまうだろう。そうなれば逃げるのは難しい。
シャマル達が助けようとしてくれるだろうが、闇の書の力を使うことになりかねない。そうなってしまえば、完成が遠退いてしまい、主を苦しめることになる。そのように考える一方で、夜月の言っていたことが脳裏を過ぎる。
……私は何を迷っているんだ。夜月を斬るときに覚悟を決めたはず。あいつの言葉に迷うことなど、もう許されはしない。
今すべきことは、一刻も早く闇の書を完成させること。少女ひとりで来たから罠である可能性もあるが、彼女を現場で見かけたことはない。彼女の力量からすれば、現場に出るように要請されるのが普通だろう。今日初めて姿を現したということは、言葉どおり夜月を回収に来ただけとも考えられる。
周囲には私達以外の魔力反応も転移の気配もない。ヴィータ達の方に意識を向けていたとすれば、まだ少し余裕があるはず。
この少女はテスタロッサ以上の実力者だろうが、私もこれまでに無数の戦闘を行ってきた。隙を見て魔力を蒐集するだ
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