As 09 「舞い降りた紫炎」
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れた夜月に主に対して抱くような愛おしさや好意が沸き起こる。
彼の顔が歪むのは戦いの中で散々目にした。もうこれ以上、大切な人の苦しむ姿は見たくはない。蒐集は、もしも再び彼が戦場に姿を現したときに行おう。
「夜月……聞こえていないだろうが、主が元気になった際にはこれまでどおり接してほしい。都合の良いことをいっているのは分かっているが、あの方にお前は必要な存在なのだ」
私のことは避けてくれても構わないから、と続けて呟こうとしたのだが躊躇してしまった。自分で思っていた以上に、夜月に心を許してしまっていたようだ。傷つけたというのに、嫌わないでほしいなどと何と虫の良い話だろうか――
「やれやれ……」
静かに声が響いた。それに導かれるように視線を上空に向けると、月を背景にひとりの少女が滞空している。
「帰りが遅いと思って探しに出てみれば……まあこうなることも覚悟はしていましたが」
空に浮かぶ少女の声は、気のせいかどことなく聞き覚えがあるものだ。記憶を辿ると、行き着いた先はテスタロッサの仲間である純白の魔導師が浮かんできた。
すでに管理局に包囲されたのか、と慌てて周囲を確認する。が、周囲にある魔力反応は夜月を除けば目の前の少女ひとり。そのことに安心する一方で、何かの罠ではないのかと疑ってしまう。
「……お前はテスタロッサの仲間か?」
「テスタロッサの仲間? ……あぁ、そういうことですか」
宙にいた少女は何か呟いたかと思うと、ゆっくりと地上へと降り始めた。静かに着地した彼女は、自然体でこちらへと近づいてくる。少女の全貌が明らかになるにつれて、テスタロッサの仲間だという認識は間違いであることが判明した。
纏っている防護服や手にしているデバイスの形状は、テスタロッサの仲間である少女に酷似している。だが色合いが異なっており、全体的な印象としては紫。
外見も酷似しているのだが、純白の魔導師とは違って髪は短めに切り揃えられている。瞳の色も澄み切った青色だ。
「はじめまして、ベルカの騎士。私はシュテル・スタークスと申します」
見た目からして夜月やあの少女達と変わらない年頃だと思うのだが、スカートをつまんでの挨拶は淑女だと感じさせるほど様になっている。
……この少女、テスタロッサの仲間である少女に似てはいるが全くの別人だ。
そう確信する理由に口調や立ち振る舞いの違いもあるが、何よりもこちらに向けている目が違う。純白の魔導師には優しさを感じさせる色があったが、目の前にいる少女の目にそれは感じない。感じるのは、静かに燃え盛っている怒りだけだ。
「敵を目の前にして挨拶とは余裕だな」
「いえいえ、余裕なんてありませんよ……胸の内で燃え盛る怒りの業火が、あなたを撃ち滅ぼせと囁いていますから」
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