その手に宿る調律。
そして想いは力となりて
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付いて離れない凄惨な記憶。
そして。
俺が揉め事処理屋として活動をしてきた中で、救う事の出来なかった人々。
その度に、俺は涙を流して悔いて来た。自分の無力さに、情けなさに。
『はい、私と貴方様は言うなれば一心同体。比翼連理ですから』
諧調はそう言葉にする。
だが、俺とこの存在の間にそんな事実は存在しない。
「だから…だから、もう失うのは嫌なんだよッ!!」
―――それは俺の心の内に秘めた慟哭。
何時の間にか、瞳から涙が零れ落ちていた。涙を流すのは、一体何時以来だろうか?
…彼女の死、以来かもしれない。
―――彼女の、静流の死以来だろう。
『私と契約を結ぶという事は、永遠存在になるという事です。その事実を理解していますか?』
それは、お母さんやお父さんの様に“そちら側”に足を踏み入れるという事だ。
人である事を止めて、永遠存在として文字通り永遠に死ぬ事もなく、孤独に歩み続ける事になる。
世界から切り離されて、大切な人達にも忘れ去られて。
その存在を始めから“無かった”事にされて。
いつの日か、マナの塵となるまで、闘い続けなければならない。
―――解っている。理解している。
俺はその諧調の言葉に力強く頷く。
「それでも俺は力を望むよ。何も出来ずにいて、それで何かがあったら俺は絶対に後悔するから」
俺は諧調を真正面から見据えて、そう心の赴くままに言葉を口にする。
俺のその言葉に、諧調は数瞬の間押し黙る。まるで、俺の言葉を反芻する様に、噛み締める様に。
『……貴方様の覚悟、決意、然りと受け取りました。故に、私は貴方と契約を交わす事にしましょう』
「……いいのか?」
俺は涙を拭いながら、そう問い掛ける。
『はい。貴方のその信念、心の持ち様は私の担い手に相応しい。優しくいて、それでいて折れる事の無い不屈の刃の様なお人』
「…いや、俺はそんな大層な存在じゃないよ。」
『謙遜ですよ。貴方は前世においても強い存在でした。武よりもその心が』
「いや、俺は弱くて脆弱な存在だよ。…だから、きっとこれからも傷付き、繰り返す」
『自身が気付いていないだけです。それに良いではないですか、傷付かずに歩んで行けると言うのならそれは最早人ではない』
「それは……本当に俺でいいんだな?」
『はい、貴方様以外にはあり得ませんよ。私は今までも、そしてこれからも貴方と共にあり、共に傷付く、貴方を包み込む“鞘”になりましょう。』
「ああ、わかったよ。“諧調”」
『はい、“主様”。さぁ、私の名を呼んで下さい』
「共に歩んで行こう、“ヴィクトリア”」
俺は“彼女”の化身としての
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