その手に宿る調律。
姉弟の気持ち
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
いつもの幼いこの子としてではない。今は一人の男として。
一人の倉橋時夜という男として、この子は今此処に存在しているのだ。
そう認識させられる。決定的で、致命的であった。
その何時もと違う時夜の側面に、思わずドキリ…とする。
黄昏色の光を帯び、何処か憂鬱気に目を細めていて、年下だというのに酷く蠱惑的に、大人びて見える。
その姿は、言動は似てはいないけれど、何処か“彼”と重なって見えて…。
「……ルナお姉ちゃん?」
「…ううん、なんでもないわ」
思考に浸っていた私の意識がその声に引き戻される。
首を傾げる時夜に、私はかぶりを振る。
「…時夜、本当にいいのね?」
本当ならば、この子の両親の承諾も得なければいけない所。
時深であれば、時夜の身を案じて、そんな事はさせないだろう。
凍夜は、しっかりとした覚悟と意志を持っての事ならば、きっと何も言わない。
「うん、もう決めた事だから」
きっとこの子はその内に人知れず抱えている物がある。
けれど、今は深くは聞かないで置こう。いつかこの子から話してくれる時を待とう。
「…そう、それなら私はもう何も言わないわ」
ならば、私はこの子の姉として、今はその背中を押す事にしよう。
.
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ