暁 〜小説投稿サイト〜
緋弾のアリア-諧調の担い手-
その手に宿る調律。
姉弟の気持ち
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いつもの幼いこの子としてではない。今は一人の男として。

一人の倉橋時夜という男として、この子は今此処に存在しているのだ。

そう認識させられる。決定的で、致命的であった。
その何時もと違う時夜の側面に、思わずドキリ…とする。

黄昏色の光を帯び、何処か憂鬱気に目を細めていて、年下だというのに酷く蠱惑的に、大人びて見える。

その姿は、言動は似てはいないけれど、何処か“彼”と重なって見えて…。


「……ルナお姉ちゃん?」

「…ううん、なんでもないわ」


思考に浸っていた私の意識がその声に引き戻される。
首を傾げる時夜に、私はかぶりを振る。


「…時夜、本当にいいのね?」


本当ならば、この子の両親の承諾も得なければいけない所。
時深であれば、時夜の身を案じて、そんな事はさせないだろう。
凍夜は、しっかりとした覚悟と意志を持っての事ならば、きっと何も言わない。


「うん、もう決めた事だから」


きっとこの子はその内に人知れず抱えている物がある。
けれど、今は深くは聞かないで置こう。いつかこの子から話してくれる時を待とう。


「…そう、それなら私はもう何も言わないわ」


ならば、私はこの子の姉として、今はその背中を押す事にしよう。


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