その手に宿る調律。
生れ落ちる生命
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出す前に、俺はルナお姉ちゃんに抱き締められた。
「―――んっ!?……んっ!」
ナルカナの豊満な胸が顔を塞いで、息が出来ない。
「―――ぷふぁ!!」
俺がもがくと、それに伴ってその二つの豊かな丘が激しく形を変える。
もがき苦しみ、ようやく顔を外に出して新鮮な空気を吸う事が出来た。
「…る、ルナお姉ちゃん、どうしたの…?」
「大丈夫、時夜?何もされていない?!」
何やら困惑状態に陥っている自らの姉に、俺自身も困惑する。
……何かされていない?
綺羅お姉ちゃんもそうだが、その問いに別段思い当たる節はない。
昼寝から覚めてからというもの、姉達の様子が鬼気迫って見えるのは俺の思い過ごしか?
「…どうして?特にないよ?」
その言葉を聞いて、ルナお姉ちゃんは真正面から俺を見据える。
だが数瞬後には、ほっ…と安堵の息を吐く。そうして何時もの様に、優しい微笑みを浮かべる。
「…そう、何かあったら直ぐに言うのよ?」
「うん!」
「…綺羅、ちょっといいかしら」
「はい。…時夜様、ナルカナ様と少々お話があるので先に屋敷の方に戻っていてもらってよろしいですか?」
「うん、解った」
「直ぐに追いつきますからね」
そうして俺は二人に背を向けて、出雲大社に向けて歩き出した。
話の内容は気になるが、幼い俺が口を挟む余地は無い事だろう。
1
「はむっ♪」
三時のおやつの時間。
俺は今日のおやつである、姉謹製の桜餅とおはぎに舌鼓を打っていた。
特に、環お姉ちゃんの作る桜餅は絶品だ。
お母さんの作る桜餅も美味しいけれど、桜餅に関しては環お姉ちゃんに軍配が上がる。
けれど、それを前に出して言葉にする事はない。それを口に出せば、あの親バカは泣いてしまう事だろう。
だが、どちらの桜餅にも、しっかりとした情が籠もっている。
本来ならば優劣の付けようがない。けれど、好み的には環お姉ちゃんだ。
口一杯に、リスの様に桜餅を頬張る。
精神は身体に引っ張られるというけれど、正にその通りだと思う。
ここ数年の俺は幼児退行したかの様に、何処かしら仕草や言動が歳相応の物へと変わっている。
我ながら、それを恥ずかしいとすら思う時がある。
桜の葉の淡い風味と、餡子の味が口の中へと広がって行く。和の上品な味わいだ。
俺は前世より、和菓子好きであった為に、毎度おやつの時間が楽しみでしょうがない。
「ちょっと時夜、私の作ったおはぎも食べてよね?」
「は〜い、食べるよ」
ルナお姉ちゃんの作ったおはぎを、一口食べる。
うん、こっちも和独特の上品な味わ
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