暁 〜小説投稿サイト〜
緋弾のアリア-諧調の担い手-
その手に宿る調律。
生れ落ちる生命
[1/4]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


綺羅side
《出雲・周辺》
PM:2時42分


「…いい天気ですね」


私は今、出雲の緑に溢れた森林の中を穏やかに歩いていた。
目的はただ一つ。お昼寝をしている時夜様を起こしに行く為だ。

今日の三時のおやつは、時夜様の大好きな桜餅とおはぎ。
今頃、ナルカナ様と環様が時夜様の為に、腕を揮っている事だろう。


木々、野に咲く野花を揺らす春風。
木漏れ日より漏れる、心地よい柔らかな陽気な日差し。森の合間から見える空には雲一つない。

その中で、私も眠りに誘われそうになる。
今直ぐにでもそっと瞳を閉ざせば、きっと気持ちよく眠る事が出来そうだ。

けれど、そうは行かない。思わず零れる欠伸を噛み殺して、意識を切り替える。
穏やかな薫風をその身に受けて、森の中へと新たに一歩踏み出す。


「……っ…これは」


……刹那。一歩踏み出した、次の瞬間であった。
この陽気をも容易に吹き飛ばす程の、膨大な力を感じ取ったのは。

木々に留まった鳥達が、急ぐ様にして一斉に飛び立つ。
虫達は息を、その声を押し殺す様にして、静まり返る。

それだけで、先程までの森とは最早別の場所の様に思えてくる。未知の空間。
不気味なまでの静寂が森林を包み込み、思わず背筋が冷たくなるのを感じる。

ゾクリ…とする程の濃密で濃厚なマナ。
それが私の犬神族としての嗅覚、感覚が異常なまでに感知する。

その発信地は此処から程遠くない場所だ。私は急いで場所を特定する。
そして一気に脳内から色が抜け落ちて行く。そして、焦燥の色が頭を支配する。

特定された、その場所。
それは、時夜様が眠っている大樹の方向から発せられている。

先程までの穏やかな足取りとは一転。私は跳ぶ様にして森を駆ける。
念頭に、ナルカナ様に告げられていた言葉が脳裏を過ぎる。

今より幼き頃、時夜様に干渉を及ぼしているという存在がいる。
真っ先に浮かんだのはその存在であった。

その存在マナは予想を悪く裏切る程に膨大だ。
戦闘になるとしても、今現在の私の能力では著しく厳しい所だろう。時間稼ぎ程度も出来ないかも知れない。

けれど、私の事を姉と慕う可愛い弟の危機なのだ。
多少の無茶も危険も、目下の視野に入れなけれならないだろう。


「待っていてください、時夜様ッ!」






1







「…ナルカナ様、今のは」

「……ええ、間違えないわね」


不意に思わず、おはぎを作っていた手が止まる。
此処に居てでも明瞭と感じ取れる程の膨大なマナと、上位の神剣の気配。

……この気配は。

その気配には覚えがあった。
昔より時夜に干渉を及ぼしている神剣のマナの
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ