参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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「・・・ふン。しっかり食えよ」
いきなり意気消沈したあたしに男は肩すかしを食らったように鼻を鳴らしたが、素直に椀を渡してくれた。口に運ぶと、優しい甘さが喉を伝う。暖かいお粥は安心する。あたしがどのくらい寝ていたかはわかんないけど、あたしが前田家や佐々家にいたのはほんとに、つい昨日のことのようだ。楽しかったし、辛くもあったし、でもそれでもやっぱり楽しかった。みんないたから。こんなふうに別れが来るなんて思っても見なかった。
・・・うん。やっぱり尼になろう。高彬に操立てる訳じゃないけれど、もう一回別のところで人生やり直し、なんて前向きに生きれない。一旦は受けた求婚、別の人と婚姻なんてことも考えられないし、・・・きっと、今も、高彬はあたしが死んだと思って悲しんでいる筈。だって、あたしが見た最期の高彬は泣いていた。大きくなってから久しく見ていなかった泣き顔だ。自惚れでも何でも無く、ただ高彬は優しいから・・・心を痛めているに違いないのだ。高彬も、父上も、由良だって、みんな悲しんでくれている。いつかは立ち直るとしても。そんなみんなを余所にあたしが平然と生きていられない。
「ねぇ」
「なンだ?」
「どっかに落飾してくれるようなお寺ない?」
「ふン、なぜだ?」
「なぜって・・・尼になりたいからよ」
「事情があるみてェだが、世を儚むにはちィと早ェんじゃねェかァ?」
「いーの!あたしなんてどーせ遅かれ早かれ行き着く先は尼寺だけなんだから」
「こら。自暴自棄になるな。仏の光明は全てをお救い下さると言うが、一時の激情で髪を切れば悔いが残るぞ。髪はすぐには伸びん。取り返しがつかんくなる前にようく考えるんだな」
「何?いきなり真面目な坊さんみたいなこと言って」
「みたいとは失礼な。俺は紛う事なき僧侶だァぞ」
「なぁにを世迷い言を・・・ってええ!?本当にお坊さんなの!?」
そう言われて見ると、確かに男の衣は墨染めだ!しかし袈裟をつけていないのもあるし、何より髪がある!しかも長い!後ろでひとくくりにしてある髪は背の中程まであって、普通の武士と変わらぬ長さだ。これはわからないわよ・・・。
「有髪僧・・・」
「まァなァ」
「というか色々アリなの!?それって!」
「アリだアリ。俺は生臭坊主だからなァ」
自分で言うかとは思うけど、なるほどいかにもこれが生臭坊主であると言った風体である。そして多分・・・この男帯刀している?
あたしがじろじろと男を見ていると、男は感心
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