参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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にあう可能性も高い。春を鬻ぐ・・・なんて絶対にイヤよっ!あたし自分で言うのもナンだけど、そもそも売れるような顔でもない。二束三文で買い叩かれて、すぐボロ雑巾のように使い捨てられるのがオチだ。
他に・・・なにか・・・権力者に保護して貰うとか?でもそんなの、いくら名目は保護って言っても内実妾扱いだ。何をしようとも、結局、あたしが女であることがついてまわる。この物騒な戦国の世では、受容するしかない事実だとしても、悔しさが胸を焼く。
ん・・・いや、あるじゃないの!タダで読経も聞けて、女の身でも生きていけそうなところが!
あたしはぽんと手を打った。
お寺よ寺!尼寺!尼になれば、俗世とは切り離されるから、誰に会う心配も無し、しかも寺だから幽霊なんぞ寄りつかなくて一石二鳥、おまけに読経もタダで聞き放題じゃないの。あたしがこの先の余生、静か〜に大人しく岩のように兄上達の菩提を弔って生きていけるかは別問題だけど、とりあえず尼寺ってのは良い選択肢だと思う。
「ん?今度こそ起きたァのか?」
あたしが自分の名案にしみじみ頷いていると、いきなり妙な訛りの声が聞こえた。
それにつられて振り仰げば、素足と黒い衣と盆が見えた。
えっ、高彬!?
ひょいっと盆の向こうからのぞいた顔を見て、あたしは心臓が飛び出るぐらい驚いた。一瞬、その顔が高彬に見えたのだ。しかしよく見れば高彬よりも男らしくて、何で見間違えたのかと思うほど全く違う顔だったけれども、心臓の鼓動はすぐにはおさまらない。
「おい、何だァ?俺の顔に何かついてるか?」
男は器用に片眉をあげて、ずいと顔を近づけた。
「つっ、ついてるも何も・・・ついてないけど」
一生女には困らないと確信するほどの美丈夫に顔を覗き込まれて、あたしはあわあわと動揺しながら、その顔を左手で遠慮無く押しのけた。は、鼻高いなこの男・・・。
「おい、随分だァな?命の恩人に」
「あ、いや、あの、その・・・ありがとうゴザイマシタ・・・」
なんだかもーあたしは一人で混乱してて、布団の中に顔の半分まで潜り込んでもごもごと言った。
「あァ」
と、男は言ったかと思うと、大きい手で、いきなり唯一布団から出ているあたしの頭をわしわしと乱暴に撫でた。
「いいか、何があったかは知らねェが、その若さで入水なんてするモンじゃねェぞ」
そして頼もしい兄が如く、優しく笑う。
はぁこれはさぞおモテになることでしょう・・・。暫しあたし
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