その手に宿る調律。
夢と現の狭間で出会うモノ
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刹那、俺の身体を目を開けられない程の光が包み込む。
その光は暖かくて、陽の光の様に、俺を安心させる。そこに先程までの警戒心はない。
そこで俺は不意に、自身の意識が浮上していく気配を感じ取った。
そうして漸く思い出す。自分という存在を。そして繰り返し見続けている、この夢を。
“……■…□■…。”
そして最後に、俺は彼女の言葉を耳にした。
そうして俺の意識はそこで暗転した。
2
『…夜…ま………と』
まどろむ俺の意識の外側より、誰かが俺に優しく語り掛けてくる。
それに伴い、上りかけていた意識が急浮上して行くのを俺は感じ取る。
「……きら、おねちゃん?」
良く眠っていたのか瞼が重い。我ながら舌足らずな声でそう呟く。
朧気な視界には、呼び掛けたであろう姉の姿が逆さまに映った。
欠伸をかみ殺しながら不意に思う。ふと、頭の下に柔らかいものがある事に気が付いた。
柔らかく、そして人肌の様に温かい。淀む意識でも自ずと理解出来た。
俺は綺羅お姉ちゃんに膝枕されている状態であった。
「…漸くお目覚めになりましたか、時夜様?」
「…うん、おはよう綺羅お姉ちゃん」
朧気な瞳を擦り、覚束ない足取りで膝枕の上から起き上がる。
周囲を思わず見回す。そこは俺の知る、何時もの場所であった。先程の夢の場所ではない。
周囲の世界を見回し認識して、ホッ…と一息吐く。
……あの夢の世界で見ていた夢。
何故今になって、長年見続けていたその夢。
その忘却された、見たという事実だけを覚えていた空ろな夢。
それを明瞭と思い出しているのか、その理由は定かではない。
まるで脳に鍵が掛かったかの様に、現実での振り返る余地など与えられていなかった。
故に、解らない。
何故今になってそれを思い出す事が出来るのかが。
ただ一つ理解出来るのは、あの存在が昔より俺に語り掛けてきている事だった。
「―――時夜様?」
「んっ、どうしたの綺羅お姉ちゃん?」
不意に、思考の外側から誰かの語り掛けてくる声が聞こえてくる。
その声に、深く沈んでいた意識は現実に引き戻される。
俺は呼び掛けた綺羅お姉ちゃんにその蒼穹の双眸を向ける。
その見据えた顔は今までに見た事がない程までに、真剣なものであった。
「…いえ、ジッ…と前方を見据えていましたので。どうかされたのですか?」
「…ううん、ちょっとまだ寝惚けていただけだよ?」
思考に耽っていたのを気付かれない様に、俺はそう言葉を切り返した。
到底、他人に話す事の出来る話題ではない。
話でもしたらきっと、頭の可笑しい子供だと思
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