その手に宿る調律。
夢と現の狭間で出会うモノ
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据える。そうして―――
“水晶の中の、彼女を守護するかの様に浮かぶ四本の鞘。そしてその少女と目が合った。”
“……■…□…。”
そうして、何かを訴えるかの様な視線を向けて口を開く。
けれど、それは俺には届かない。その遮る様に隔てられた水晶、それが一枚板となっている。
俺は彼女の言葉を聞こうと、その水晶に身を寄せて手を這わせた。
何かが軋み壊れる様な、破砕音が聞こえた。響いた。そして不意に、少女の声が耳に届いた。
その刹那、眩い程の閃光が世界を包み込んだ。
1
世界が閃光が包み込み、幾程の時間が経過したのか。…解らない。
急な視界のブラックアウトに視覚器官麻痺して、視界が淀む。
何時の間にか。
そこに存在していた巨大な水晶、それは言葉通りに姿を消していた。
そうして、そこに映し出されていた女の子の姿も。
それこそ淀む視界の様に曖昧であり、夢幻の様に、元より存在しなかったのかもしれない。
「……見間違え、だったのかな」
そんな筈はないと思いながらも、それを肯定出来る材料が何一つない。
確かに少女の姿を見た、確かに少女の声を刹那の間に聞いた。
けれど、先まで水晶の存在していた眼前を見据えるも、そこには何も存在しない。
だが不意にそんな心の空虚感を埋めるかの様に、強く陽の光を感じる。
再びの視界の暗転に、今度は思わず瞳を閉ざす。
数瞬後、眩いと感じた光は消え失せ、朧気な視界の先にはとある存在が見据えられた。
「――――っ」
俺は思わず息を呑み込んだ。歪む視界も一瞬で正された程に。
圧巻という言葉が正しいだろうか、それを目に入れた瞬間にそう感じ取った。
俺の第六感が警笛を最大限に打ち鳴らす。
だが俺は不思議とその存在から目を離す事が出来なかった。
否、まるで魔性の月夜の様に、瞳を反らす事が許されなかったのだ。
「……これは、鞘?」
震える様に、そう漸く言葉にする事が出来た。
宙に浮くように存在する、四本の威厳にして荘厳、そうして尊厳に満ち足りた鞘。
言い知れぬ畏怖をその鞘から感じ取る、この存在の前では自分が酷く矮小な存在に思えてくる。
それでも何故ゆえか、俺の足は立ち止まる事はなかった。
自身の事であるが、悪魔に見入られたかの様に、その存在へと突き進んでゆく。
鞘は淡い光を発して、俺に語り掛けてくる。
そう不思議と理解出来る。だが生憎と、俺にはそれを理解するべき術を持たない。
気付けば、俺はその鞘の目の前にまで躍り出ていた。
そうして俺の手は何の警戒もせずに、その鞘へと伸ばされ様としていた。
―――そうして、俺はその鞘を手に取った。
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