その手に宿る調律。
時夜、四歳の一時
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に、前世では一人暮らしで最低限の料理しか出来なかった俺からして、此処の料理の数々は舌を巻く程だ。
だけれども、時には洋食が食べたいと思う俺は贅沢な悩みなのだろう。
「…そういえば、お父さんとお母さんはまだ帰ってこないの?」
今現在、この場を見れば解る様に両親はいない。
二人ともそれぞれの仕事で出雲を出ている。最後に会ったのは、一週間と少し前だ。
俺の四回目の誕生日を祝った後ほどから二人して、出雲を出ている。
俺はふと食事の途中で箸を置いて、思い至った事を環お姉ちゃんに質問した。
「ごめんなさい、時夜さん。凍夜さんも時深も仕事が忙しいみたいで、まだ帰って来れないみたいなのです」
「……そうなんだ」
「時夜様、寂しいですか?」
俺の一瞬の逡巡を感じ取ったのか、綺羅お姉ちゃんがそう聞いてくる。
俺はそれにゆっくりと左右に首を振る。
「ううん、二人もお仕事で忙しいんでしょ?なら、少しは俺も我慢しなくちゃ」
これは建前だ。正直その答えに内心安堵感を覚えて、一息吐く。
あの両親達は毎回帰ってくる度にまるで、何年も会っていなかった様に、感動の再会の様な茶番をする。
その矛先が俺に向かなければよいのだが、いかんせん、アレらは恐るべき親バカなのだ。
俺はだから心底、心の中で安堵する。
暫くは、あの親バカ共に会わなくて済むと。別に嫌いじゃない、むしろ両親の事は好いている。
ただ、あの茶番が嫌なだけだ。
帰って来てから数日は、俺の自由というものが存在しないと言ってもいい。
「大丈夫よ、時夜。寂しいなら私達がいるから、遠慮せずに甘えなさい」
何時の間にか復活していたルナお姉ちゃん。大きな胸を主張させながら、そう言葉を俺に告げる。
「まぁ、機会があったらお願いね、ルナお姉ちゃん」
4
「では、今日のお勉強の時間を始めますね」
「は〜い!」
朝食を何事もなく終えて、俺は環お姉ちゃんと一つの部屋にいた。
最近は環お姉ちゃんに、勉強を教えて貰っている。
勉強と言っても、読み書き等をする訳ではない。
過去に歴史にあった出来事を掻い摘んで教えて貰っているのだ。
環お姉ちゃんは教えるのが上手で、まるで小説や絵本を読んで貰っている様な感じだ。
そうして、穏やかな時間は流れてゆく。
5
環お姉ちゃんとのお勉強を終え、綺羅お姉ちゃんと遊んで、昼食を摂った後。
俺は、朝と同じく最近のお気に入りスポットの大樹の前まで来ていた。
「…ふぁ…あっ」
自然と洩れる欠伸、精神は大人でも身体は子供、身体が
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