その手に宿る調律。
時夜、四歳の一時
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「は〜い」
そう元気良く答えた時夜の瞳は既に、父親譲りの蒼穹の瞳へと戻っていた。
最近はもう日課と化している散歩。周囲の人達も今は俺の散歩に対して何も言わなくなった。
だが、最初の内は色々と大変だった。珍しく早起きをして、散歩に出た時の事。
家の過保護な親バカである両親の暴走と、出雲全体を動かした総動員の捜索。
まぁ、当の本人が言うのはアレだけど、騒動の鎮静に手間取った。
親バカ達の事だが。家の両親は子供の俺が言うのは何だけど、過保護過ぎると思うのだ。
だが、その時は失念していたのだ。
俺は前世の人格を保有している為に、その年齢の子供から見たら大人びて見えると思う。
けど、普通の親ならば急に子供が消えたとなれば心配し、死に物狂いで探す事だろう。
この出雲は自然が手付かずで残っている為に、野生の動物達もいるのだ。
俺が親ならば、子供を野放しにはしたりしない。
ようはそういう事なのだろう。家の両親達の思いも理解出来る、だが度が過ぎると俺は思うのだ。
「……どうしました、時夜様?」
「んっ、何でもないよ?それよりも綺羅お姉ちゃん、今日の朝ご飯は何かな?」
無意識の内に思案顔にでもなっていたのだろう、綺羅お姉ちゃんがそう聞いてくる。
まさか思った事を話す事は出来ないので、時夜は話を変える様にして口を開く。
「今日は時夜様の好きな、なめこのお味噌汁です。早くしないとナルカナ様に全て食べられてしまうかもしれませんよ?」
「うわぁ、ルナお姉ちゃんならやりそうだね。早く帰ろう、綺羅お姉ちゃん!」
俺は姉に急かされる様に言葉を掛けられ、手を引く様にして屋敷へと歩を進めた。
3
「おはようございます!」
「ただいま帰りました」
散歩の終着点。
出雲の本社に着いた俺と綺羅お姉ちゃんは長い廊下を歩いて、表座敷の襖を開けて中へ入る。
「おはようございます時夜さん。今日も元気ですね」
「おはよう時夜、待っていたわ」
俺達を迎え入れる見慣れた顔ぶれ、それが二つある。
一人は異彩風な服装を纏った黒髪の少女。もう一人は、同じく異彩な服装を纏った緑髪の女性。
上の人物は上位永遠神剣、永遠神剣第一位『叢雲』の化身、ナルカナ。
そして残りの一人はこの出雲を統べる長であり、俺の母親の姉に当たる女性、倉橋環。
二人とも本当に俺に良くしてくれる。綺羅お姉ちゃんを含めて、自慢で自信の姉で家族だ。
…まぁ、色々と癖の強い人達だけれど、それでもいい人達である事には変わりない。
ここが大切な俺の居場所。
……嘗て、前世で一度は手にして、手放してしまったもの。
この温もりを
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