決戦5
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「罠にかかったのは貴様の方だったな」
呟かれた言葉が、背後からヘルダーに投げかけられた。
どこか得意げな口調に、ヘルダーは唇に浮かびかけた笑みを押さえた。
だから、若造だと言うのだ。
罠にかけたというのならば、わざわざそれを口にせず、背後から撃てばいい。
勝利の言葉など、それからゆっくりと言えばいい。
「若造一人に何ができる」
「何?」
疑問を浮かびかけたラインハルトに、ヘルダーのブラスターが火を噴いた。
振り向きざまに放ったレーザーは、ラインハルトがブラスターの引き金を引く事を許さない。
咄嗟に避けたラインハルトの動きとともに、ヘルダーは走る。
岩場の影からブラスターを撃ち、ラインハルトを岩場へと釘づけにする。
正確に放たれるレーザー光は岩を穿ち、容易に顔をのぞかせないでいる。
いや、そうしている。
「私が何もせずに、今の地位にいると思ったのか。貴様のような貴族でもない、私が」
幾多の戦場を巡った。
多くの戦友を失った。
多くの血を流し、彼は今の地位を得た。
だが、それも。
「貴様ら貴族は暖かい艦橋でウィスキーを飲み、ファイエルと言っていればいい。だが、血を吐いて得た私はいまだに最前線の司令官だ。貴様と私で何が違うと言うのだ。血筋か――美人の姉でもいれば良かったのか?」
怒りにまかされたレーザーは、長い時を経ても錆びる事はない。
断続的に打ち続けられた光が、正確にラインハルトを狙っていく。
「暖かい部屋で妻と子供に囲まれるという望みが、それほどまでに我がままなのか!」
問いかけられた言葉に、答える声はない。
それをヘルダーも期待してはいなかった。
ただ憎かった。
帝国に殉じて得た今の地位も。
そして、それをあっさりと崩そうとする貴族にも。
全てが。
咆哮となって放たれたレーザーは、やがて切れる。
引き金を引く鈍い音だけが響けば、ラインハルトが待っていたとばかりに身体を出した。
若造が。だから、甘い。
チャージパックを取り出して、再装填するのは一瞬。
構えたブラスターの向こうで、ラインハルトが驚いた表情を見せた。
驚いている暇があるならば、撃てというものだ。
こちらは命をビットするのに慣れている。
放ったレーザーはラインハルトの腕を捕え、ブラスターが離れた。
雪原に倒れるのは一瞬、すぐにブラスターを奪おうと動いた。
いい判断だが。
「遅いぞ?」
動き出したラインハルトの頭に、ブラスターが突きつけられた。
+ + +
「ここまでだな」
呟かれた言葉に、ラインハルトが静かにこちらを見る。
このような場で、まだ死ぬことは出来ない。
まだ生きている。
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