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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
決戦5
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 だからこそ、考える。
 この窮地を脱する策を。
 ヘルダーの腕はラインハルトにとって、予想外のことだった。
 相手の力を侮り過ぎた。
 その失敗は、さらに彼を大きくするだろう。

 だからこそ――生き延びなければならない。
 睨みつけるヘルダーは、ともすればすぐにでも引き金を引きそうだ。
 だが、頭に突きつけられたブラスターからすぐに引き金を引く事はないと確信できる。
 おそらくは、ラインハルトの命乞いか、伝えたい言葉の後か。
 ならば。

「俺を殺して、罪に問われないとでも」
「戦闘下において残党に殺されたとするさ。そのようなことはどうにでもなる」
「普通の兵ならな。しかし、普通ではないと貴様がそう言ったばかりではないか」
 苦々しげにヘルダーの顔が歪んだ。
「それもお偉い方がどうにかしてくれるだろうさ」

 ラインハルトの笑い声が、雪原に響いた。
 小さく鈴の音をならすような音だ。
「何がおかしい?」
「失礼。貴族をあれほど信用しないと言っていた貴様が、最後に貴族を信じるとはな」
「なに」

「貴族が信じられないと言ったのは貴様ではないか。その通り、貴様などは貴族の出世を妬んだ一兵士として捨てられる。貴様を優遇して何になるのだ。不利な証拠は消すのが一番ではないか」
「そ、そのようなこと」
「そんなことはないか。なぜ、そう言い切れる――貴様は俺を殺すと同時に、皇帝陛下の寵姫の弟を殺した罪に問われるだろう。結果は一族郎党処刑だ」

 そして、笑う。
「おめでとう。確かに貴様の望みは叶う――ヴァルハラで家族に囲まれて、楽しく過ごすと良い」
「き、貴様っ!」
 怒りを浮かべて引き金を引こうと動いた。
 撃つタイミングさえコントロール出来れば、かわすことはできる。
 ラインハルトは挑発と同時に動きだそうと、身体に力を込めた。

 もっとも、それはラインハルトにとっては悪手でしかなかったが。
 ヘルダーの腕は感情とは別に、敵の動きによって引き金を引くほどに洗練されていた。
 ラインハルトが身体を沈みこませたと同時に、ブラスターが動いている。
 だが。

 引き金は最後まで引かれることはなく、轟音と共に舞い上がった炎が身体を揺らしたのだった。
「何がっ」
 叫んだ隙をラインハルトは見逃さない。
 雪原に落ちたブラスターを無事な左手で握り、岩場へと飛び込んだ。

 放とうとすれば、さすがだろう。
 ヘルダーもその場にはおらず、先ほどラインハルトが逃げ込んだ岩場に姿を隠していた。
「何が!」
 ヘルダーの叫びに答えるように、再び戦場となっているであろう場所から炎が舞い上がる。燃え広がる炎と兵士の悲鳴がここまで届いた。

「何がもない。敵の空挺部隊が突入したのだ」

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