そして彼女の道行きは
そして彼女の転生記録
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る気配はない。
健やかに寝息を立てて眠る黒髪の少年の枕元。
そこには、サンタクロースからのプレゼントの様に、一つのヘッドギアが置かれている。
―――ナーブギア
そう呼ばれる代物だ。
そのコンパクトな見た目に反して、最先端技術の叡智と言っても過言ではない。
直接神経結合環境システム――NERv Direct Linkage Environment System、頭文字を取ってNERDLES。
それは自身の神経を直接システムに繋げて、神経の動きを察知したシステムが、仮想空間の中で
現実と同じ動きを再現する。
つまりは、ヴァーチャルリアリティの中に自分自身を投影する事だ。
それが始めて世に出たのは2006年の事であった。私が生まれる一年前の出来後。
その時点で、前世の科学技術から大きく剥離しており、それに追随する様に、脳や神経に関する技術も大きく進歩していた。
前世では理数系を専攻に学んでいた為に、その技術発展の凄さが理解出来た。
当初出たNERDLESは業務用、冷蔵庫サイズのものであった。
そして大手のゲームメーカーがリリースしたNERDLESで動くゲームは1プレイ3000円で、全国五箇所の設置店のみでの稼動となったが、それでも長蛇の列が絶えなかった。
斯く言う私も、弟の同伴者として少ないお小遣いで、“慣らし”程度のつもりで遊びに行った覚えがある。
「……うん」
そんな思考の海に浸っていると、不意にその声に現実に引き戻される。
そして私は追い討ちをかける様にして、揺すり掛ける。
「起きて下さい、和人」
「……うん…っ…姉さん」
「もう、漸く起きた?朝食の準備が出来てるから早く起きて?」
「は〜い」
私は朧気ながらに意識を覚醒させた弟の姿に、満足げに頷く。
だが、また再びベッドに潜り込み、眠りに就こうとする。
「全く、“今日”は大切な日でしょう?サービス開始に間に合わなくても知らないからね?」
その言葉に、まるで耳元で目覚ましが鳴ったかの様に、意識を急速に解凍する和人。
その様子に、私は思わず苦笑する。
「おはよう、姉さん!」
「はい、おはようございます」
そうして慌しくも、桐ヶ谷家の一日が始まる。
2
朝食を皆で摂り終え、母親と妹を見送った私は手早く家内の掃除を済ます。
そして弟は一人で部屋に閉じ篭り、遠足前の子供の様にわくわく…としていた。
時計を見ると、時刻はもう間もなく正午を迎えようとしていた。
それを確認して、私は部屋へと向かう。
そうして手に取るのは、先程弟の部屋で見たヘッドギア。
ナーブギアを頭からす
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