そして彼女の道行きは
そして彼女の転生記録
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を出る為に、お弁当の準備と並行で朝ご飯の調理を始める。
そうして手馴れた手付きで調理を開始し、徐々に時間が経つにつれて数々のメニューが出来上がって行く。
その料理の腕前は、一手に家事を任されている事が頷ける程の水準の高さである。
鮭の切り身、卵焼き、自家製の漬物、炊きたての白米、鍋には豆腐とわかめの味噌汁。
その出来栄えに、少女は我ながら関心する様に頷く。
この家では、食事は出来るだけ皆で摂る事を義務付けている。やはり、食事は皆で楽しく囲いたい。
そんな思考に、少女は内心で苦笑する。
……前世では、こんな風に考えた事はありませんでしたね。
今朝見た夢のせいか、今日は無性に前世の事を思い出す。
きっと真綾と呼ばれた頃、その私を知る人間が見ればきっと誰だか解らない事だろう。
それ程までに、自身でも変革したという自覚がある。
けれど、それでも。
自身の内側を構成する、魂の渇望は変わる事はない。
「……良い匂いねぇ」
食欲をそそる匂いがキッチンからリビングへと流れ出す。
そしてそれとは逆に、一人の人間の声がキッチンへと流れ込んで来る。
女性の声。それは私にとっても聞き馴染みのある、存在の声だ。
そうして、声の主へと私は視線を向ける。そこにいたのは、自身の母親の姿であった。
“桐ヶ谷翠”。
もう直ぐ四十を迎える齢であるが、それよりも遥かに若い女性に見える。
それ故に、私にとっては言い得て妙であるが、姉という関係が当て嵌まる。
「おはよう、お母さん」
「はい、おはよう“一乃”。…何時も、朝ご飯の準備をまかせっきりでゴメンなさいね」
「ううん、私が好きでやっている事だから」
“桐ヶ谷一乃”。それが私の今世での魂に刻まれた記号であった。
初めてその名前を呼ばれた時、長年その名で呼ばれ続けていたかの様に、胸の中へと浸透していった。
「スグは起きてた?」
「ええ。今着替えていた所だから、もう直ぐ降りてくると思うわ。…和人は、まだ起きていなかったけれど」
「そう、朝食が冷めても困るし、起こしに行ってくるわ」
そう告げ、エプロンを脱ぎ捨てて、弟達の自室がある二階へと上がる。
そうして、部屋の扉をコンコン…とノックするが、返って来る返答はない。
「…おじゃまします、っと」
そうして、扉を開けて部屋の中へと侵入する。
部屋の中はカーテンで遮られて薄暗いが、仄かに部屋の中が発光している。
「…もう、また和人ったらパソコンを付けっぱなしにして」
何時も眠る時はパソコンは切る様に言い付けているのだが、一向に直る事はない。
また、早朝までネトゲに勤しんでいたのだろう。何度身体を揺すっても、起き
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