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緋弾のアリア-諧調の担い手-
そして彼女の道行きは
そして彼女の転生記録
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はどの様に生を歩むだろうか?

自分の前世の記憶を総動員して、自身の世界を変えるべく革新に至るか。
自身の身体を鍛え上げ、前世とは違った道を踏破するか。
更には知識を蓄える為に、貪欲に知識を貪るか。

十人十色、百人百色の道がある事だろう。
斯く言う私も、この期に前世とは違う、新たな道を模索したいとは思ってはいる。

仮に姿や心持ちが変わったとして、自身の本質。
その魂を構成する渇望は、未来永劫に変革する事はないだろう。

それは絶対にして、不可侵だ。


―――ああ、漸くですか。


終わりが、そして始まりが近づいて来ている事を私は察知する。

出来上がった身体が、母親から栄養を受け続けている事を理解する。
けれど、それももう終わりだろう。もうこの優しい鳥籠に閉じられている時間は終わりを告げる。

今日この日より、新たに始まるのだ。
私という未だ名も無い一人の人間が。その未踏の第二の人生が。未知が。

零にして、空っぽにして、無色にて、新たに一歩を踏み出そう。






1







「……そんな事も、ありましたね」


初冬を迎えるまだ少し手前、秋の深まった季節。

それでも、早朝と言える時間帯は初冬の様に肌寒い。
睡魔に襲われる意識が、その冷たさに強引に覚醒させられる。
ネットゲームに没頭して、睡眠時間は大幅に削られ、眠れた時間は僅かに四時間程だ。

自宅にて。
その勝手知ったるキッチンにて、エプロンを身に付けて立つ黒髪の少女が欠伸を噛み殺して、一人そう呟く。

今朝見た夢の残滓。
自身の出生、そして生い立ちを振り返る様に思考を過去へと向ける。

普通は記憶には残らない、母胎での優しい記憶。
それでも少女はそれを、明瞭な記憶として保持していた。

……懐かしい。

そう心の中で呟く。この世界に生れ落ちた日。
それは“真綾”と呼ばれた自分が死んで、“私”として新たに新生した日だ。

それでも。
前世の私が死んだとしても、その魂に刻み付けられた想いは途絶える事はない。

現在の日付は2022年11月2日。
私が生まれてから既に、15年の月日が流れていた。
前世の生誕よりも、十年以上も後にこの世界に私は生まれた。

―――今日が、今世にとっての本当の始まりの日となる。

そして、全ての終わりの日であるという事も理解している。
キッチンから見えるリビングのテレビでは、社会現象ともなり得る程の勢いと支持を得ているネトゲの特番が組まれていた。


「さて、始めましょうか」


テレビから視線を反らして、時計を見やる。
現在の時間は、午前6時10分前。

母親の仕事のお弁当と、妹が休日の部活動で家
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