心知れば迷いて
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背反する二つの事柄は彼を思考と感情の迷路に追い込んでいた。
ふるふると頭を振った秋斗は、せめて戦の状況が落ち着いてから考えようと思考を切り替えた。
夜天を見上げて思い出すのは幽州での事。三人で店長の店で祈り合った願いの事。続けて自分の心を覗き込む。
白蓮の負けと牡丹の死については全く実感が湧いてこなかったが……少しだけ歓喜が胸にあった。将として情報を得た事で自分達の軍の強化を頭で計算し、ついでのように歴史が変わったと実感する事だけは出来た為に。
公孫賛は河北動乱の末に生き残る事が出来ない。それが変わった事は秋斗にとって大きかったのだ。
史実とは違い、早回しのように流れて進むこの乱世で、秋斗は白蓮の生存は後々有利になり得る大きな要因であると考えていた。有力な将や軍師、太守が少ないこの世界で白蓮のような人材は最も希少であった。このまま先に進んで行くならば、乱世でもかなりの戦力となり、後の治世もより強固なモノに出来る為に。
――友の生存が嬉しい、友の死が悲しいと素直に実感出来ないくせに、嬉しい誤算だとして先の予測に組み込んで行く俺はいったいなんなんだろうな。
ふっと自嘲の笑みを零した秋斗はそのまま、次に白蓮に会ったら何を話せばいいのかと考えながら、三日月が嗤う夜天を見つめ続けた。
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