心知れば迷いて
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。お前達には世話になるな。俺にとって四人で寝る事はかなり支えになっているらしい。明後日にはここを出るから準備もあるし、少し早い内に寝ようか」
これでいい。早鐘を打つ心臓を誤魔化すように、頷いてからこれからの戦の事、本城に戻ってからする事を話し合い、時間が経つと月ちゃんと詠さんが来て、広い寝台の上で四人で煮詰めて行った。
話す内に彼の暖かさに包まれているからか、眠気に勝てずに私は眠りに落ちて行った。全てが上手く行く事を夢見ながら。
その夜に夢を見た。彼に想いを伝えて、受け入れて貰える幸せな夢を。
†
己を心配してくれる三人の少女達を起こさないように、服の裾を握りしめている雛里の手を優しく開いて、ゆっくりと身体を起こした秋斗は部屋から静かに出て行こうと寝台から腰を上げようとして……一つの寝言が耳に入った。
「ずっと……乱世が終わっても、傍にいさせてください……秋斗さん」
呆然と、虚空を見つめる事幾分、彼は頭を振って立ち上がり部屋から出て行った。
廊下を抜けて、見晴らしのいい場所に腰を降ろして……大きくため息をつく。
彼は雛里に対しての感情を抑える事に必死であった。
目を見つめられて、秋斗は彼女の想いが誰に向いているかに疑問を持った。その瞳は牡丹が白蓮に向けているモノと同じであったから、まさか自分にそんな感情を向けているのではないかと。
疑問を持てば早かった。徐晃隊の面々からのからかいの言葉も本当のモノであったのか。誰もが本心から雛里に対して応援をして、くっつけようとしていたのか。自惚れ、ととれたらどれほど良いか、最後に彼女の寝言で確信に至ってしまった。
自分が零してしまいそうになって抱きしめて誤魔化したのは、ただでさえ自分勝手な都合で他の勢力に行く選択肢を握りつぶして巻き込んでしまっているというのに、これ以上振り回したくなかった為。
三日月を見上げながら、自分をこの世界に送り込んだ少女を思い出して舌打ちを一つ。
「……まさかこんな異物な俺の事を誰かが好きになってくれるとは思わなかったぞ」
彼の身体は確かに人間である。力が上がっているという点を除けば生前の姿のまま。それならば、誰かを愛する事に問題はない。
しかし……秋斗の心は煮え切らない。この世界にとって異物な自分が誰かを想い、想われる事などあって良いのかと。沢山の人を殺している自分に幸せがが与えられていいのかと。世界改変の為に切り捨なければならない事態となれば、切り捨てる事が出来るのかと。
自分の想いに気付いてから、本当は隠し通すつもりでいた。だというのに、彼女の気持ちに気付いてしまえば、どうしたらいいか分からなくなっていた。
嘘を重ねる事もしたくない。傷つける事もしたくない。
現在、
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