心知れば迷いて
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を切って言葉を続けた。
「乱世を越えて行くんだし、俺達は沢山の哀しみを経験して沢山の憎しみを受けるよな。でも俺達の作った平穏な世界、その先を生きる子供達が戦争なんていう理不尽な目に合わずに笑って暮らせるなら、その子達が血で濡れないで済むのなら、汚れちまっても責められても憎まれても遣り切るまでは死んでやらんし結果で示そうか」
強く言ってはいるが、まるで自分に言い聞かせているようにも聞こえた。もしかしたらこの人は……怖いのかもしれない。
友の死を現実として受け止める事が。自分が切り捨てた結果を確認する事が。それでも前に進もうとする彼は、やっぱり私と違って強い人だ。
「秋斗さん。私はお話を聞く事しか出来ませんが、お友達の事でお辛くなったらいつでも言ってくださいね」
今度は彼が呆気に取られていた。どうやら私の予想は当たりだったようだ。
「はぁ……月にも敵わないなぁ。ありがとな、月。耐えられそうに無いその時は……ちょっと話に付き合ってくれ。じゃあ雛里が帰って来たら一日二日で出れるように準備し始めるよ。あ、お茶美味かったぞ」
笑顔を向けてからぐっと立ち上がった彼は大きく伸びをして部屋を出て行く。
小さく手を振って見送る私は、彼が頼ってくれるかもしれないという事で心が満たされていた。
†
孫権軍が敗北したというのに袁術軍に目立った動きは無く、しばらくは大丈夫だろうと判断して私と鈴々ちゃんは秋斗さん達の待つ城に戻ってきていた。
そこで為された報告に私達は目を見開く。
「関靖、死んじゃったのか……」
哀しみに暮れる鈴々ちゃんの顔は昏く、涙が滲んでいた。彼女は私よりも少しだけ関靖さんと関わりがあったから仕方ないだろう。
私にとっては顔を合わせた程度の人。でも……幽州で彼と楽しそうに過ごしていた人。彼にとっての大切な友達。
きっとこの心の痛みは彼が心配だから。人の生き死にに鈍くなっている自分を実感してしまう。こうやって私達は乱世を越えて行くのかと考えると心が凍りついてしまいそう。私達は乱世が終わったら……人でいられるんだろうか。
頭を振って落ちて行く思考を追い遣り、鈴々ちゃんと別れてから、月ちゃんに話を聞いた。彼は事実を受け止めきれていないとの事。そういえば、自分がした行いをしっかりと噛みしめて消化する人だったと遅れて思い出した。
――それなら報告については何も聞かないほうがいい。掘り下げてしまうよりも、直面した時に支えないと。
お風呂に入って身なりを整えてから、やっと辿り着いた彼の部屋の前で深呼吸を一つ。
戦が始まってからは四人で一緒に寝る事も無く、今日は久しぶりに寝ようと先程三人で決めておいた。最近では詠さんも月ちゃんも四人で寝る事が楽しみになって
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