アリシゼーション編
episode1 隠された真実2
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いつだって平和ってやつは唐突に崩れるものだと知ってはいるが、今回はそれにもましてわけが分からなかった。
「にゅ、入院!? 何があったんです!?」
「そのままの意味です」
突然の連絡に声を荒げた俺に電話口で答えたのは、リュウさん。『四神守』……つまりは俺の勘当された本家……の付き人の一族、『神月』の一人である彼は、医師という職業の負のイメージをそのまま形にしたような、ひどく事務的な口調で答えてきた。
「医療保護入院ですから何かが起こる前に入院させたのです。英断でしたよ、蒼夜様にご感謝なさってください。ああ、もう医療保護のほうに移行しましたから主としての役目はございませんので別に急ぎ来院いただく必要はないですが、できる限り早い方がとは思います」
「いや、全然伝わりませんよ!? 入院ってどこに、」
「医療保護入院なのですから……ああ、貴方には分かりませんか」
声を荒げた俺に、リュウさんの声はどこまでも淡々としていた。
「ウチの病院の、精神科病床ですよ」
◆
夕方、面会時間ぎりぎりに訪れた四神守の系列病院……俺の伯母に当たる女性、蒼夜さんが院長を務める場所だ……で再会した牡丹さんは、「変わり果てた」という言葉では到底表現できないほどの有り様だった。俺の知る、清楚で清廉、凛とした彼女の面影は、全く無かった。
「……牡丹、さん……」
「ひどい有り様だったから、沈静かけてある……ああ、分かんないか、寝かしてあるわ。もうじき切れるから話は醒めてから聞きなさい」
答えた蒼夜伯母さんの声は、耳には届いても頭には入ってこなかった。
それほどに、牡丹さんの姿は衝撃的だった。
たった一日ぶりとは到底思えないほどにこけた頬に、目元には深いクマが目立っている。髪はいつもすとんと腰まで落ちていた彼女のそれとは到底思えないほど……どれほどの力で掻き毟ればそうなるのかというほどに乱れていて、その隙間には爪が食い込んだろう瘡蓋がいくつも見られた。きっと病衣に隠れた身体も同様だろう。
―――ひどい有り様だった。
蒼夜さんのその言葉が無くても、それは十分すぎるほどに理解できた。
「……これ……」
「ああ、身体拘束ね。アタシが精神科もやってて良かったわね。ほっとくと何の道具もなくても爪だけで死にかねないわよ、コレ。まったく……ああ、『四神守』の本家と『神月』には連絡してあるから法的に問題はないわ。……まあ、ちょっと無茶はしたけど」
牡丹さんの手足は、ベルトで止められていた。
拘束具、なんて俺はゲームや漫画の世界でしか見たことがなかったし、そのゲームの世界でのそれはもっと「いかにも、らしい」格好をしていた。今彼女を縛るそ
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