アリシゼーション編
episode1 隠された真実2
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
前の彼女には到底及ばないにせよ、それでも自分の思いを貫けるくらいにはあると信じて、真直ぐに言う。
「もちろん知っているわ。ただしこれはアタシが今この場でいうことじゃあ、ないでしょうね。……だってアタシは『賭けに負けた』わ。だったら『勝ったほう』のシナリオに従うのが筋ってモノよ。……明日まで待ちなさい」
「明日……それは、なぜ?」
「明日なら『全員』が揃うからよ。アタシは確かにアンタの知らないことを知ってるわ。……そこのソレが隠してたことも含めて、ね。ただ、」
蒼夜伯母さんは、ちらりと牡丹さんを見やって、再びこちらを見る。その視線の動きから彼女の心を読み取ることは、俺にはできない。だがそこには決して軽くない、彼女の中の何か……何か揺ぎ無いものがあることを感じさせた。
「アタシも全ては知らない。……ほかの部分を知ってるのは呼白と、玄路兄ぃね。……どうせ聞くならまとめて聞いたほうが話がはやいわ。……それに、」
彼女は、そこまで言って身を翻す。
はためく白衣のポケットに片手を突込み、もう片方の手をひらひらと振って。
「……そこのソレから聞くのが一番でしょうよ。何日も身体拘束するとメンドーだから、さっさと何とかしなさい。アンタの不手際……っていうかアンタが馬鹿なせいで起きた厄介事なんだから、アンタが責任とりなさいな」
それだけを残して、病室に俺を残していってしまった。
◆
蒼夜伯母さんが去った後、間をおかずに目覚めた牡丹さんの様子は、まさに「鬼気迫る」ものだった。伯母の言った「ひどい有様」がその姿かたちではなくこっちの意味だったことを、俺は思い知らされていた。
「わ、わたしは、と、取り返しの……う、ううぅぅっ!!!」
「牡丹さん、落ち着いてください」
「ダメです、私は、もう、う、うううっ、お仕えする資格などない、死んで当然の身! 主様に顔向けできないのです、死んで、こ、殺して、うああああああああ!」
抑制帯、と呼ばれる拘束具を引きちぎらんばかりにギシギシと鳴らし、焦点の合わない目で口角泡を吹いて叫ぶ、牡丹さん。俺を見てなお俺を見ず、見開いた眼は小刻みに揺れる瞳孔ととめどなく流れる涙がその狂気を際立たせていた。わなわなと震える口は、今にも舌を噛み切りそうだった。
いつもは小憎らしいほどに冷静で大人びた、牡丹さん。
そんな彼女が、まるで化け物を見た子供のように錯乱していた。
俺の知らない牡丹さんの姿に、知らぬ間に息を呑む。初めて体感する、感情の剥き出された狂気に、熱くもないのに体から汗が噴き出す。いつだって頼れる人だった彼女の豹変ぶりに、身が竦むのを感じる。手のひらが、べっとりと湿っていく。
しかし。
「……
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ