アリシゼーション編
episode1 隠された真実2
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れは、そんな一切の示威的……いわゆる「見せかけ」の要素を排除した、機能性のみに特化した、「装置」だった。
「牡丹さん、どうして……」
そう、それは、「装置」だ。彼女をこの世につなぎとめるための装置。そう頭ではわかっているのに、俺にはそれが彼女を縛り付けるための拘束具にしか見えなかった。かつて俺を……俺達を、異世界に囚えた……
(……まるで、ナーヴギアのように)
あの、悪魔の機械の様に。
そこまで考えた、その瞬間。
(……ああ、そうか……)
意識が、すっと冷えていった。
(……何やってんだ、俺は……)
その冷却に、恐怖がなかったわけじゃない。あの時の様に、なにもできない恐怖。自分の手の届かないところで、取り返しのつかない事態が進行していく恐怖。ただそれは、俺の思考を妨げるほどのではなかった。もっと強い思いが、考えろと脳の奥で叫び続けていたから。
―――また、動けなくなるのか。あの頃と、同じように。
力いっぱいに頭を振る。
(……俺は、あのころとは違う)
もう二度と、失うものか。
もう二度と、繰り返すものか。
冷えてきた……回転を取り戻してきた頭を、ゆっくりと加速させていく。あの牡丹さんがこんなことになるなど、確かに異常だ。だがだからこそ、俺は冷静にならなくてはならない。あの時の様に、恐怖と絶望でなにもできないままに失うなど、あってはならない。
「……いったい、何があったんです?」
となりの蒼夜さんに聞く。
「……へえ?」
彼女の苛立ちを隠そうともしない表情の中で、眉が片方つりあがった。
何を感じたのかまでは分からないが、それでも何らかの変化をこの才媛は読み取ったらしい。もう四十をとうに超えている(詳しくは知らない、聞けない)とは到底信じがたい妖艶な笑みが、その顔に浮かぶ。楽しむように首を揺らすごとに、夜の闇のように深い黒髪が、まるで俺を絡めとるように波打つ。
「……ふむ。……ちょっとはマシな顔もするじゃない? ……となると私の見立ては外れだったわけね。まあいいわ。『あんな小娘一人に、』なんて言えなかったわけだ。……頭を下げるのも癪だけど、ね」
「……? 説明をお願いします。間違いなく、蒼夜さんは知っていますよね。俺が知らない、そして牡丹さんが知っていることを。……そして、それは俺が関係しているはずだ。牡丹さんがこんなことになるなんて、俺のせい以外であるはずがない」
俺よりはるかに人生の修羅場をくぐってきただろうその女性……世が世であれば、あるいは仮想世界でなら『歴戦の魔女』と呼ぶのがこの上なくしっくりくるだろう伯母を見据えて、言葉を紡ぐ。俺にどれくらいの覇気があるかは分からない。しかし、目の
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