暁 〜小説投稿サイト〜
戦争を知る世代
第十三話 生存
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
せるかもしれぬ、生きていくのが辛いかもしれぬ、よく考えてくれ。ー聞くのか、聞かないのかをな。」


イナリは目を瞑り、考え込んでいるようだ。
その間、部屋は静まり、外の喧騒だけが聞こえる。
日は少し傾いており、皆夕飯の買い出しなどに外に出ているのだろう。

イナリはゆっくりと目を開けた。考えが固まったのかもしれぬ、しかし、まだ考える時間があってもいいだろう。

「イナリ、明日、葬儀の後に答えを聞こう。」


「わかりました。」

「それとイナリ、今日はクシナとミナトの家に行きなさい。」

「え?どういうことですか?」
イナリは心底不思議そうに首を傾げている。


「こういうときは一人でいるものじゃない。クシナにはもう話してあるから、外で待っておるじゃろう。一緒に夕飯でも食べるといい」

驚いておる。困惑しておる。
でもな、イナリ、一人でおるのは辛いのじゃ。お前は慣れてしまっているのかもしれん。でも、それは心の表だけであって、裏では傷ついているのじゃよ。

「分かり・・ました。それでは、失礼します。」

そう言ってイナリは部屋を出ていった。



(あ、イナリ君、待ってたわ。)
(クシナさん、本当にいいんですか?)
(もー、当たり前だってばね!よーし、イナリ君の為に、今日はいっぱいつくっちゃうからねー!)


部屋の外から声が聞こえる。
これはなかなかいい案だったと思う。
イナリ、これからはお前にとって険しい道が待っている。だから、今日だけは“幸せ”でいて欲しい。


もう一度、街を見ておこうかと思って窓に近づくと、向かいの屋根に白い狐が座ってこちらを見ていた。

「あなたは・・・イナリをどう思っているのですか?」
そう、呟いた。


狐は尻尾を二回、左右にゆっくりと振る。
振りおわった頃には、もうその姿はなかった。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ