第十三話 生存
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せるかもしれぬ、生きていくのが辛いかもしれぬ、よく考えてくれ。ー聞くのか、聞かないのかをな。」
イナリは目を瞑り、考え込んでいるようだ。
その間、部屋は静まり、外の喧騒だけが聞こえる。
日は少し傾いており、皆夕飯の買い出しなどに外に出ているのだろう。
イナリはゆっくりと目を開けた。考えが固まったのかもしれぬ、しかし、まだ考える時間があってもいいだろう。
「イナリ、明日、葬儀の後に答えを聞こう。」
「わかりました。」
「それとイナリ、今日はクシナとミナトの家に行きなさい。」
「え?どういうことですか?」
イナリは心底不思議そうに首を傾げている。
「こういうときは一人でいるものじゃない。クシナにはもう話してあるから、外で待っておるじゃろう。一緒に夕飯でも食べるといい」
驚いておる。困惑しておる。
でもな、イナリ、一人でおるのは辛いのじゃ。お前は慣れてしまっているのかもしれん。でも、それは心の表だけであって、裏では傷ついているのじゃよ。
「分かり・・ました。それでは、失礼します。」
そう言ってイナリは部屋を出ていった。
(あ、イナリ君、待ってたわ。)
(クシナさん、本当にいいんですか?)
(もー、当たり前だってばね!よーし、イナリ君の為に、今日はいっぱいつくっちゃうからねー!)
部屋の外から声が聞こえる。
これはなかなかいい案だったと思う。
イナリ、これからはお前にとって険しい道が待っている。だから、今日だけは“幸せ”でいて欲しい。
もう一度、街を見ておこうかと思って窓に近づくと、向かいの屋根に白い狐が座ってこちらを見ていた。
「あなたは・・・イナリをどう思っているのですか?」
そう、呟いた。
狐は尻尾を二回、左右にゆっくりと振る。
振りおわった頃には、もうその姿はなかった。
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