第十三話 生存
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抜く為には。
「はい。」
まだ、頭を垂れたままだ。
「さて、本題に移ろうかの。この前の戦果じゃが、暁の森での戦いは木の葉の勝利で終わった。」
垂れていた頭が勢いよく上がり、こちらを見ている。その目には先程までなかった“希望”のような色がちらついていた。
「しかし、被害も大きい。攻撃部隊4個小隊は戦闘中盤で敵に後背を取られ、前後で挟撃された。サクモ、ミナトが援軍として行ってくれたからどうにかなったが、それでも7割の損失。そして、お前たち支援部隊は補給任務中、敵の奇襲を受けた。損害は・・・半壊。」
半壊・・・その言葉を使った直後、彼の瞳から希望が消えた。
恐らく、分かっていたことだろう。それでも、希望を抱かずにはいられなかった。アカデミーの仲間が、友人が、死んだなどと信じたくはなかったはずだ。
「は、半壊とはぐ、具体的にはどのような・・・」
力なく、震える声だった。
目をぎゅっと瞑り、息を吐いた。
「支援部隊 後方支援科 通常補給群 第79小隊のメンバー全員の戦死が確認された。また、同第88小隊に至っては小隊長は重傷。小隊員は軽傷。」
イナリはまた、頭を垂れる。彼の顔色を伺うことも出来ず、反応もない。ただ、少しだけ、肩が震えていた。
「79小隊のメンバーは、全員、損傷は激しかったが、遺体は回収されている。皆、家族の元に帰してやれる。それは、何よりも救いかもしれん。」
「そんなの・・・」
ずっと黙っていたイナリが声を出した。
聞き取れるかどうかのほんの小さな声を。
そして、
「そんなの関係ない!!」
イナリが叫んだ。
「そんなの・・・関係ない・よ。」
顔を上げたその顔は、目を真っ赤にして泣きじゃくっている顔だった。
儂は目が離せなんだ。
何も言えず、何も出来ず、ただ彼の目を見つめることしか出来なかった。
「・・皆は、生きて帰りたかった。死んで帰るつもりなんて、なかった!」
「なんで・・・なんで、みんなが・・!」
泣いて、泣いて、溢れるほど涙を流し、涙声で叫ぶ。
!?
そうじゃ、儂は何でそんなことも理解できなかったのであろう。ただただ、無責任に彼に伝えてしまった。
居ても立っても要られず、儂はイナリを抱き締めた。
何もできなかった儂には、ただただ、抱き締めてやることしかできなかった。
そうして、声を絞り出した。
「すまぬ・・・本当にすまぬ。」
イナリは、そのまましばらくの間泣き続けた。
「すみません、火影様。取り乱してしまって。」
気を持ち直したのか、落ちついた声だった。
しかし、その目は真っ赤なままで、頬には涙が流れた後が残っている
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