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継母選び
第四章
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い。武勇伝も多くあるのであろう。五郎は彼の話を聞いていて心の中でそう思った。
「お武家様そのものです」
「ごついのか」
「はい」
 話を聞いて余計に嫌になった。聞くのではなかったと思った。しかし聞いてしまったと言っても話はもう決まっている。彼はその鬼に会うしかなかったのである。
「お楽しみを」
「わかった」
 少し身体を小さくさせて述べてきた。
「では行ってみるぞ」
「はい、どうぞ」
「しかしじゃ」
 行くところでふと馬を止めて若者に対して言う。
「幾ら何でも。鬼姫というのは言い過ぎではないのか?」
「そうじゃ」
 彼は述べる。
「鬼とはのう。幾ら何でも」
「まあそれは御会いしてからです」
 若者は笑みをそのままに述べる。
「それからお考え下さい」
「わかった。それではな」
「はい」
 こうして彼はその道場に行くことになった。程なくしてその門の前に来たがすぐにドスン、バタン、という激しい物音が門の内側から聞こえてきた。
「ふむ、やっておるな」
 五郎はそれを聞いて心の中で呟いた。
「それもかなり」
「まだまだぁっ!」
 野太い女の声が聞こえてきた。何と女の声なのに野太いのである。
「もしや」
 彼はその声を聞いて顔を顰めさせた。
「あの声が」
「来い!もういっちょう!」
 間違いなかった。女の声であった。野太く荒々しいがどう聞いても女の声であった。
 その声を聞いて間違いないと思った。ここにいると確信した彼は馬を止めて道場の中に入った。入った途端にまた声が聞こえてきた。
「おおりゃあ!」
 木造りの道場の中で大男が投げられていた。投げているのは女であった。掛け声から先程の野太い声の主であるとわかる。その声に相応しくかなり大柄で荒々しい感じの女だ。山女かと思える程だ。
 黒い髪をざんばらにして男の服を着ている。そして周りの者を次から次にちぎっては投げ、ちぎっては投げであった。まるで化け物のようである。
「もし」
 五郎は彼女を見ながら足元に転がってきた男に声をかけた。今女に投げられた者である。
「あの女が鬼姫であるか?」
「はい、その通りです」
 彼は何とか起き上がりながら答えてきた。見ればあちこち痣だらけだ。それだけ見ても彼女が相当な強さであることがわかる。
「それが何か」
「ふむ、やはりな」
 彼はそれを聞いてまずは頷いた。
「そうじゃろうと思った。実はな」
「はい」
 男は立ち上がっても背中を押さえていた。先程投げられてしこたま打ちつけたらしい。それで痛がっているのだ。
「彼女と話がしたいのじゃ」
「鬼姫様とですか」
「左様じゃ。よいかな」
「ええまあ、私は」
 彼はそれに応えて述べた。
「構いませんが」
「うむ、それではな」
 彼はそのまま前に出
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