ヘルヘイム編
第20話 剥がれ始める
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ここはユグドラシル・コーポレーションが用意した避難用地下シェルター。外ではスカラー電磁兵器が使われるか否かという切迫した事態にまで発展している。
「じゃあね、光兄さん。また後で」
光実は咲と碧沙を送り出してしまった。追うこともできず、諦めてチームメイトの下に戻った。
コンクリート固めのばかでかい空間の隅で、チーム鎧武、そしてチームリトルスターマインは固まっていた。
「ミッチ。ちょっといいか?」
「なに、ラット」
「あの子たち、上に戻るって言ったよな。エレベーター、壊れてるんじゃなかったのか?」
「――、あ」
声を上げたのは無意識だった。声を上げてから、さっと血の気が引いた。
仲間から顔を逸らした。口を押さえても、出てしまった音は取り消せない。
しかし、そんな光実の心情を知ってか知らずか、ラットは光実の両肩を掴んでまっすぐ目を合わせてきた。
「なあ、ミッチ。最近お前おかしいよ。なんか隠し事してるみたいじゃないか」
「そんな、こと」
「じゃあ何でさっき嘘ついたんだよっ」
俯く。どんな答え方をしても、ラットたちにとってはウソの上塗りだ。
「紘汰さんもだけど、ミッチもだよ。そうやって一人で抱え込む癖。仲間だろ? 俺たち」
仲間だから。それを理由に全てを打ち明けられたらどんなに楽か。
けれども、それはしたくない。彼らには陽だまりの中で笑って踊っていてほしい。
だから、どの脅威も真実も、光実の心の内に。
(貴虎兄さんはずっと僕と碧沙に対してそうしてきたんだ。僕にもできる。僕は呉島貴虎の弟だ)
「――仲間だからって、言えることと言えないことがある」
光実はラットの腕を腕で押し返してどかした。なるべく冷たく聞こえるように声を低くしたつもりだが、上手くいっただろうか。
「いいじゃないか、別に。確かにフリーステージのことは嘘だよ。でもここに来なきゃいけなかったのは本当なんだ。僕がいいって言うまでここにいる。それだけでいいんだよ」
リカとチャッキーから畏怖のまなざしを向けられる。仲間に向ける目ではない。――ああ、そんなふうに見られたくなくて、がんばってきたはずなのに。
見えるようだ。ラットやリカやチャッキーの中の「ミッチ」が崩れて行くのが。
やめてそんな目で見ないで、と泣いて訴えたい衝動を、胸の中、全力で圧殺した。
「ユグドラシルに関係あることなの?」
舞が探るように口にした単語。彼女の平和を壊した、忌むべき組織の名。
「前にミッチと紘汰、言ったよね。インベスゲームを流行らせたのがユグドラシルだって。もしかして今回も」
「ちがいますッ!!」
あまりに大声だった
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