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継母選び
第一章
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「ころりか」
「うむ、実に呆気ないものじゃった」
 彼は嘆息して述べた。そこには無念さが伝わっていた。
「確かに手強い女であったができた女であった」
「そうか」
「それは残念じゃな」
「左様。おかげでわしは今寂しい思いをしておる」
 彼は嘆息してからまた述べた。
「どうにもこうにもな」
「それではじゃ」
 仲間うちの一人が言ってきた。
「御主今は一人身だな」
「うむ。妾を持てる程ではないしな」
 残念ながらそこまで地位も富もない。大抵の武士はそうであったが彼もまたそうであったのだ。
「寂しいものじゃ。しかしな」
「しかし?」
「娘がおる」
 彼はこう述べてきた。
「もう十三になる娘がな」
「十三といえば」
 仲間達はその娘の歳を聞いて述べた。
「もうじきあれか」
「嫁に行くな」
「うむ。それで女房にも何かと役に立ってもらいたかったのじゃが」
 彼はここでまた嘆息した。この時代で十三といえばもうすぐ嫁に行くか既に行く年頃である。中々難しい年頃であると言えるのであった。
「残念じゃ」
「それだとな」
 また仲間達が彼に声をかけてきた。
「いい考えがあるぞ」
「何じゃ?」
「何、簡単なことじゃ」
「簡単なこととは」
 そう述べる仲間に対して顔を向けてきた。
「どういったものじゃ」
「また嫁をもらってはどうじゃ」
 そのうちの一人が言ってきた言葉である。
「嫁をか。つまり後妻か」
「うむ。どうじゃ」
「そうじゃなあ」
 五郎はそれを言われてあらためて考え込んだ。
「悪くはないか」
「むしろいいじゃろ」
「どうじゃ」
「そうじゃな」
 彼はそれを聞いて頷いた。
「それじゃと」
「よいであろう。やはり女の子には母親じゃ」
「そうじゃな。少なくとも男よりはいい」
 別の仲間もそれに頷く。

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