第一章
[2/2]
[9]前 最初 [2]次話
「ころりか」
「うむ、実に呆気ないものじゃった」
彼は嘆息して述べた。そこには無念さが伝わっていた。
「確かに手強い女であったができた女であった」
「そうか」
「それは残念じゃな」
「左様。おかげでわしは今寂しい思いをしておる」
彼は嘆息してからまた述べた。
「どうにもこうにもな」
「それではじゃ」
仲間うちの一人が言ってきた。
「御主今は一人身だな」
「うむ。妾を持てる程ではないしな」
残念ながらそこまで地位も富もない。大抵の武士はそうであったが彼もまたそうであったのだ。
「寂しいものじゃ。しかしな」
「しかし?」
「娘がおる」
彼はこう述べてきた。
「もう十三になる娘がな」
「十三といえば」
仲間達はその娘の歳を聞いて述べた。
「もうじきあれか」
「嫁に行くな」
「うむ。それで女房にも何かと役に立ってもらいたかったのじゃが」
彼はここでまた嘆息した。この時代で十三といえばもうすぐ嫁に行くか既に行く年頃である。中々難しい年頃であると言えるのであった。
「残念じゃ」
「それだとな」
また仲間達が彼に声をかけてきた。
「いい考えがあるぞ」
「何じゃ?」
「何、簡単なことじゃ」
「簡単なこととは」
そう述べる仲間に対して顔を向けてきた。
「どういったものじゃ」
「また嫁をもらってはどうじゃ」
そのうちの一人が言ってきた言葉である。
「嫁をか。つまり後妻か」
「うむ。どうじゃ」
「そうじゃなあ」
五郎はそれを言われてあらためて考え込んだ。
「悪くはないか」
「むしろいいじゃろ」
「どうじゃ」
「そうじゃな」
彼はそれを聞いて頷いた。
「それじゃと」
「よいであろう。やはり女の子には母親じゃ」
「そうじゃな。少なくとも男よりはいい」
別の仲間もそれに頷く。
[9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ