第四章
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の?」
「うん、ほら」
こう言ってその赤ん坊が寝かされているベッドがそっと近付けられた。すると美月は自分の娘の左手を見た。するとそこには。
「この娘はそこなのね」
「うん、ここにあったよ」
また妻に話した。
「ここにね」
「この娘は左手なのね」
見ればそうだった。娘には左手にあるのだった。
「それもそこに」
「君は右手の甲で」
「この娘は左手の手の平」
「ある場所は逆だね」
右に左、それに甲に平だった。場所は確かに逆だった。
「けれどそれでも」
「痣の形は一緒」
それはその通りだった。
「痣は一緒なのね。やっぱり」
「そうだね。痣の形はね」
三日月の青い痣はそのままだった。それは変わらなかった。場所は正反対だがそれでも痣は同じだった。それだけは同じだったのは。
「一緒だよ」
「しるしは同じ」
美月は穏やかな、それでいて優しい笑顔で語った。
「母娘だからなのね」
「そうだね。親子だから」
「ええ」
夫の言葉に静かに頷く。
「そうね。一緒なのね」
そのことを見るのだった。ある場所は違ってもそれでもそれは同じだから。
「それじゃあこの娘も」
「将来。幸せに」
「なれるわ。私みたいに」
今度は娘の顔をじっと見ていた。その顔もまた美月と同じだった。母娘の絆はしるしによって生まれた時から確かになっていた。美月はそのことも喜んでいたのだった。
しるし 完
2009・2・23
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