例えばこんな怖がりでも前に進まなきゃいけない
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ママいわないの!」
「わ、我儘って・・・私は真剣だ!子ども扱いするなと言っただろ!・・・・・・自分で、行く」
部屋のドアがスライドし、外から光が差し込む。ジェーンは躊躇いがちにゆっくりとそちらに歩みを進めた。とくん、と小さな鼓動が彼女に確認を取るように響き、ジェーンは無言で首肯した。
同時に、この空間での私の役目が終わったかのように意識が離れていく。
ふと、意識が覚醒する。
初めて見る色。
初めて感じる光。
初めて吸い込む空気。
初めて感じる衣服の感触。
初めて嗅ぐ少し薬臭いにおい。
ああ、産まれたんだな。そう思った。
上にある電灯を眺め、不快感に思わず手を翳して光を遮る。
「まぶ、しぃ?これが”眩しい”・・・」
ママの身体を通して、ママの神経と同化して、私はひとりのISとして、漸く産声を上げた。
これは人に近いISの身体などではなく、本当の意味で人間の神経を通して感じている実感。
だから―――
「これが生きるってことなんだ・・・!」
人気のない保健室の全てが、彼女を祝福しているように感じた。
・・・あれ?何でママの身体をわたしが動かしてるの?ママの意識は?
と混乱していると、私の中からママの声が聞こえた。
『ニヒロ・・・』
「ママ・・・なんで引っ込んでるの?」
『やっぱり、思い出すと怖い。震えが止まるまでお前が体を動かしてくれ』
・・・自分のママながら、何ともしおらしいことだ。
奇しくも生まれて初めてニヒロが感じた母親に対する印象は「臆病な人」で決定してしまったのだった。”ひな形”による観測によると「へたれ」と呼ばれる人種であるらしい。
もっとも、この時ニヒロとジェーンはまだ本当に重要な事実に気付いていなかった。
『誕生』という極めて、本当にきわめて特殊な『形態移行』がニヒロに起こっていた事。そのニヒロの特殊フラグメントとジェーンは同化して、同一の肉体であると認識していた事。
結果、形態移行の影響がジェーンの肉体にも現れて「体が精神年齢相応の13歳相当に退行していた」というとんでもない事実に。
ついでながら、このとんでもない問題が表面化し解決するまでにそれなりの時間を要したことを、ここに追記しておく。
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