例えばこんな怖がりでも前に進まなきゃいけない
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た。
「やめろ・・・思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない思い出したくない!!思い出させるなぁぁぁあぁぁ!!」
頭皮が破けて出血するのも構わずがりがりと頭をかきむしり、鮮血が白い髪を斑に染める。抉れた肉の上をさらに掻き毟り、ぐちゃぐちゃと痛々しい音が響いた。見てるだけで痛々しい、そう感じた少女は慌ててジェーンを取り押さえた―――恐ろしい筋力だ。ISとしての力なしには抑えきれないだろう。
「何でこんな事するの、ママ?何を・・・怖がってるの?」
「思い出しちゃ駄目なんだ!なのにお前は思い出させようとする!」
「何を?」
暴れるジェーンがこれ以上自身を傷つけないようになんとか動きを押さえようとしながらも、少女―――ニヒロは問いかける。やがて、力で叶わない事を悟ったのかジェーンの腕はがっくりと重力に従い垂れ下がった。その目から零れ落ちる滴に、ジェーンはなんとなく自分が泣かせたかのような罪悪感を覚えた。
「私は、私が壊れないために感情を忘れたのに・・・」
「忘れた・・・忘れてたんだ」
「全部嘘だった。認めたくなかったから、嘘なんか悲しくないって自分に嘘をついた」
「・・・」
感情のハレーションが流れ込む。
30代ほどであろうか、清楚な女性と快活そうな成人男性、そして可愛らしい子供のイメージが見えた。次の瞬間、3人は全てノイズの中に呑まれて消えた。
続いて、男たちの声だけが響く。
『疑似記憶ケース34、刷り込み完了しました』
『やれ、今回は上手くいけばいいがね。前回は酷かった』
『あー・・・確かに実験台の中で排泄物撒き散らすのは勘弁してほしいですね。臭いのなんのって』
『清掃が大変でしたよ!まったく使えねぇ人形だった!・・・その点ケース34は見込みがありそうですがねぇ』
『この愛玩人形がかぁ?家族愛溢れるほど可愛げのある声で鳴いてはくれんかったがなぁ』
『おや、もう手を出してたのかい。手が速いね』
『女なんて生物は男に突かれてナンボですよ。こいつらが完成すれば鼻持ちならねぇ勘違いクソ女どもも膝待付かせてやれるしね?愛してるぞー!なんつって、ははははは・・・!』
『・・・品の無い男だ、まったく。卵巣を弄っているから妊娠はせんが、研究の邪魔になることはするなよ?』
言葉の意味は殆ど分からなかったが、不快な男達だとは思った。言語による表現の上手くいかない不快感のようなものを感じる。先ほどの男女と子供の映像は作り物で、ジェーンはそれを嘘だと気付いた、ということだろうか。
再び、意識がジェーンへと行く。
「感情が壊れて無くなったなんて大嘘だ。真田のせいで、嘘だって事実も思い出してしまった。ただバラバラに分解されて、埋められてただけだ」
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