06:《人類至上主義教団》VS《黄昏の君主》
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南宮那月は不機嫌だった。授業の最中に呼び出しを受けたからだ。那月は彩海学園に所属する英語教師であるが、それと同時に国家攻魔師の資格を持つ。同時に、何か事件が発生した場合は、そちらの役目を優先しなければならない。
空間転移を魔術を利用して転移を繰り返していくと、呼び出しを受けた爆発の起こった建物の近くに出る。視界に入った被害物を見て、那月は瞠目した。
粉々だ。恐らくは何かのビルだったのだろう、廃棄地区にあったその建造物は、爆発の影響で木っ端みじんに砕け散っていた。周りには特区警備隊が並び、被害を確認している。
恐らくは、昨夜起きた爆発テロと同じ手口。だが、いったい何者が――――
「ずいぶんと派手にやられた物だねェ」
「――――!」
振り向くと、そこには三つ揃えの白いスーツを着た、金髪碧眼の美麗な男がいた。
「呑気だな、”蛇遣い”」
「そうかい?まぁ、今日のこれには最初から期待してないしね」
東欧の《夜の帝国》、《戦王領域》に属するアルデアル公国からの使者、ディミトリエ・ヴァトラー。《旧き世代》と呼ばれる強力な吸血鬼で、《同族喰い》の達人である。《第四真祖》の監視の為に、自ら《魔族特区》絃神島へと赴き、《戦王領域》からの大使として駐在している。
ヴァトラーは《戦闘狂》と称されるほどの戦闘好きだ。その彼が「期待していない」という事は、今回のテロリストはさほど重大警戒すべきものでもないという事だろうか。
だが、ヴァトラーは魔族最強と呼ばれる種族、吸血鬼だ。それも、特に力の強い《旧き世代》の。彼の感覚では大したことがなくても、特区警備隊を始めとする人間には荷が重いかもしれない。警戒を怠ってはいけないだろう。
そこまで考えると、那月は
「興味がないなら来るな。帰れ」
ヴァトラーを邪険に追い返す。しかし、
「つれないなァ」
ヴァトラーは苦笑すると、そのままそこに立って、特区警備隊の作業の様子を観察する。特区警備隊の手際はよかった。的確に捜査を続けている。
「南宮教官!」
特区警備隊の小隊長と思しき男が走り寄ってくる。
「どうだ?」
「はっ、検証の結果……やはり、爆発物による被害かと推測されます」
「ふむ……吸血鬼の眷獣か?」
どこぞの第四真祖が何か無意識のうちにやらかしているのか、と邪推する。あの男――――暁古城は、そんな非常識なことを平気でやらかす男だ。
だが、小隊長の反応は少々予想とは異なるものだった。しきりにあたりを気にしている。
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