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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第二十二話「風呂と王女と精霊と」
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させた刻印が浮かんでいる。


「ああ。エストとの契約の証だ」


「はい……。リシャルトとの大切な絆です」


 驚いてエストに顔を向けると、彼女は朗らかな笑顔を浮かべていた。


 手の甲に触れると優しく刻印をなぞる。


「この精霊刻印がエストとリシャルトを結び付けています。いわば、エストがリシャルトのものである証なのです」


 嬉しそうに語るエスト。なんとも言えない気恥ずかしさと胸の内から湧き上がる歓喜にも似た感情をかみ締め、彼女の頭を梳くように撫でた。


「そういえば、フィアの刻印は珍しいところにあるな」


 精霊刻印が現れれるのは人それぞれだが、手、脚、腹、額に出やく、フィアの精霊刻印は胸の谷間にあった。


「たしか、フィアの精霊は聖精霊だったか?」


「ええ……そうよ」


 フィアの表情が少しこわばる。


 怪訝に思いながら次の言葉を口にしようとした時だった。


「……?」


 微かにだが、金属が打ち合う音――剣戟の音が聞こえた気がした。


 突然立ち上がった俺にフィアが怪訝な眼差しを送ってくる。


「どうしたの?」


「…………学院内で戦闘が起こっている」


 生徒同士の決闘? それにしては風王騎士団の気配がない。それに、嫌な気配もする……。


 数多の戦場を駆け抜け、多くの死線を掻い潜ってきた俺の感が囁いている。


 いますぐ戦闘の準備をしろ、と。


「エスト」


「はい。なにか外によくないものがいます」


「ああ、どうやらそのようだ。行くぞ」


「私はリシャルトの剣。常に貴方とともに」


 俺の手を握ったエストが燐光を放つと、一瞬にて精霊魔装になる。


 長剣のエストを手にした俺はフィアに向けて言う。


「聞いたとおり学院内で戦闘が起きている。侵入者かもしれん。君はここにいるんだ。ここなら精霊使いでも容易く突破できん」


「あ――」


 なにか言いたそうなフィアだったが自体は一刻を争う。


 彼女には悪いが俺は急いで浴室を出た。


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