第二十二話「風呂と王女と精霊と」
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らしく、表情の乏しい顔をこちらに向けてジーッと見つめてきた。
「じゃあ、エストちゃんも一緒にリシャルトくんを洗いましょうか」
「ちゃんはやめてください。エストのほうがお姉さんです」
「あら、ごめんなさいね」
なにを言っても無駄だと悟った俺はため息を一つ吐いた。
† † †
「どうリシャルトくん、気持ちいい?」
「痒いところはありませんか?」
なんだ、この状況は……。
現在、俺はフィアに背中を、エストに頭を洗ってもらっている。
一人用のバスルームでシャワーチェアーに腰かけ美少女二人と仲良く泡まみれ。
背後からはフィアが背中を洗うたびに豊満な乳房を水着越しで感じ、左隣からはエストがその繊手を泡で包み、優しく頭皮を揉むように髪を洗っている。
いたりつくせりとはまさにこのことか。まるでどこぞの貴族にでもなったような気分だ。
覚悟を決めてからはマッハで鼓動していた俺の心臓も落ち着きを見せている。
しかし、もともとは一人用のバスルームだ。少し身じろぎすると――。
「きゃっ! もう、おいたはダメよ?」
「ひぅっ……! リシャルト、夜の魔王になるんですか……?」
「なりません。なりせんから、そんな目で見ないでください」
上気した頬で上目遣いされたら俺の理性が吹っ飛ぶぞ。只でさえこちらはエストに対する好感度がマックスで限界突破しそうな勢いなのだから。
そりゃ俺だって男だし、こんな身近に好いてる女の子がいるんだ。しかも一つ屋根の下で暮らしてるんだ。
本音を言えばキャッキャウフフな関係になりたいし、抱きたい。しかし、事を急いてエストを傷つけてしまったらと思うと……。
それに、初めての夜はふたりきりでムードのある空間でと前世から決めてあるのだ。
こんなところで野獣になるわけにはいかないのだよっ!
(耐えろ、耐えるんだ俺……be cool……be cool……)
歯茎から血が出るほど歯を食いしばり煩悩に耐える。大丈夫だ俺、これも修行の一環だと思えばなんのこともあらん。
「それにしても、リシャルトくんの背中傷だらけね……」
「ああ、まあな。昔の古傷さ」
正確には武者修行の旅をしていた頃についた傷がほとんどだ。
傷の一つ一つを指でなぞっていたフィアが不意に呟いた。
「……それがリシャルトくんの精霊刻印なのね」
左手の甲に視線を落とす。そこには二本の剣を交差
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