03:魔城、絃神島に降り立つ
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と呟く雪菜のはずだが、今日はいつにもましてだるそうな古城に対して怒る気にもなれないらしい。大丈夫ですか?と心配そうに古城に近づく。
「ああ……あーくそっ、何でこんなに暑い日が続くんだ……」
「はは、やっぱり伸びてたね、古城」
その時だ。軽快な声が聞こえた。声のした方向を見ると、そこには一人の青年が立っていた。
長い黒髪は、首筋で結ばれ、そこから先は細く伸びている。細められた目の色は青。東洋人と西洋人の間をとったような顔つきは、少女めいた線の細さだ。どこか儚げなその四肢を黒いフード付きローブに包んでいる。ローブの裾から出された手首には、登録魔族を示すリングがはめられていた。
「魔城兄!」
「魔城君っ!!」
「久しぶりだね、古城、凪沙。うわ、二人とも背が伸びたね。あと半年もすれば抜かれちゃうかな」
駆け寄った義弟と義妹に笑いかけた青年―――暁魔城は、古城と凪沙をみてそうコメントした。古城が苦笑する。
「そういう魔城兄は変わらないな」
「仕方ないだろう、吸血鬼なんだから。十年以上この姿のままさ」
すっかり元気を取り戻した古城が、魔城の胸をどつく。しかし魔城は微動だにもせず、苦笑するのみ。
「ほえー。なんか羨ましいような羨ましくないような。あ、雪菜ちゃんもこっち来て来て!」
凪沙が雪菜を手招きする。寄ってきた雪菜を見て、魔城はまたニコリと笑う。
「はじめまして。古城と凪沙の兄、暁魔城です。よろしく」
「姫柊雪菜です。よろしくお願いします」
ぺこり、と頭を下げた雪菜に、魔城は今度はにやり、と形容するのが正しい笑みを浮かべて、古城に向かって言った。
「良い子じゃないか。古城の彼女さんかな?」
「はぁ!?ちげーよ!!そんなわけないだろ!!」
全力で反論する古城。古城としてはあらぬ誤解を掛けられては雪菜にも迷惑がかかるだろうというそれなりに思いやりのある叫びだったのだが……。
「……そんなわけない、ですか。そうですか……」
雪菜は1人沈んでいた。ちらりとそれを見た魔城は再び苦笑。
「ああ……なるほど。古城は馬鹿だねぇ」
「馬鹿とはなんだ馬鹿とは」
「そのままの意味だよ。さ、そろそろ懐かしの我が家に戻ろうか。行こう、古城、凪沙。雪菜さんもどうぞ」
***
「ほー。あれが古城のアニキか。全然似てねぇな……」
まぁ、義兄弟って言ってたからそりゃ当然だけどな、と呟きつつ、空港を出ていく暁兄妹+雪菜をギャラリーから眺めるのは矢瀬基樹だ。その隣には藍羽浅葱の姿もある。
「そう言うあんたのところの兄弟も似てないじゃない」
「そりゃそうだ。つーか似てたらいやだな……それよりいいのか?」
基樹が
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