第二話 目覚める炎その六
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「食いものの好みは仕方ないにしてもな」
「それでもよね」
「他のことにも関わるとかよくないからな」
「食べものは食べものよね」
「ああ、まああたしも食いものには派閥はないけれどさ」
だがそれでもだとだ、薊は水筒のお茶を美味そうに飲みつつ言う。
「野球はベイスターズだからな」
「そこは絶対なのね」
「ああ、幾ら優勝しなくてもな」
九十八年の優勝で三十八年ぶりだった、そしてそこからさらに優勝を経験していない。巨人ならば三十八年連続最下位であるのが相応しいが。巨人とは何か、それは戦後日本の忌まわしき悪病の象徴に他ならない。
「あたしは横浜だよ」
「星なのね」
「前は鯨だったけれどな」
横浜太洋ホエールズである。
「あたしは星派なんだよ」
「いいんじゃないの?」
「ねえ、横浜でもね」
「別にね」
裕香も他の娘達もだった、薊が横浜ファンであることについては何も嫌悪は見せなかった、そこには寛容ささえあった。
「私は阪神だけれど」
「私も」
「私はソフトバンクだけれど」
「私は中日だけれど」
「巨人でさえなかったら」
その全人類共通の敵でなければというのだ。
「うちの学園も巨人ファン殆どいないしね」
「八条リーグでもジャイアンツってチームはないしね」
八条学園を運営している八条グループが持っているプロリーグだ、独立リーグに近いかも知れない。そのリーグにはジャイアンツというチームはないのだ。
「というか薊ちゃんそこは気にすることないから」
「横浜だとね」
「巨人でない限りはね」
「あのチームだけは」
憎むべきだ、戦後日本を蝕む球界の北朝鮮でなければというのだ。
「そうでもないとね」
「別にね」
「まあ横浜も大変だけれどね」
「あのチームも」
「冗談抜きで何時優勝するんだろうな」
このことについてはだ、薊は腕を組んで考える顔になって言った。
「いや、本当にさ」
「ううん、そのうち?」
「そのうちかしら」
これが裕香達の返答だった。
「まあそのうちね」
「優勝するわよ、何時か」
「来年かも知れないけれど」
「何であんなに負けるんだろうな」
薊は言っても仕方ないことと自分でもわかりつつここでこう言った。
「ベイスターズって」
「守備が悪い?」
「何よりもピッチャーが」
「前のフロントは監督二年位ですぐに切ってて育成が迷走してたし」
「あとフリーエージェントでいつも選手出るしね」
「色々と」
「だよな、原因は一つじゃないんだよな」
横浜が勝てない原因は多い、それ故に優勝出来ないのだ。
「困ったな、まあ希望を忘れないでな」
「そう、観ていくべきよ」
「阪神なんか凄かったんだから」
阪神の暗黒時代は長かった、その間最下位になったことは数えきれない
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