糸刻み 追
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た場所の皮膚が切れ、服の切れ端や髪が宙を舞う。舞った傍から細切れにされ塵になっていく。
フィルターの寸前まで燃え、灰が落ちる。それを合図に鋼糸を回収する。
鋼糸の檻が消えると同時、レイフォンの体が地に倒れる。覆っていた圧力がなくなり緊張が切れ踏ん張りが効かなくなったのだ。
煙草を代えながらレイフォンの元へと歩いていく。
慣れない全力での剄の行使と限界を超えた動きでレイフォンは起き上がれずにいた。
息が出来ないのが辛いのか息をするのが辛いのか。それさえ分からぬ程の様相で胸を抑えて口を開けている。
暫くの間、レイフォンの息が整うまで煙草を吸って待つ。
ある程度まともな呼吸音が聞こえてくるとレイフォンを上から覗き込む。
「理解出来たか」
涙目で見上げてくる視線を真っ向から見下ろし、レイフォンの頭を靴で踏む。
「怖かったか? 痛かったか? 死ぬかもしれないと思ったか? 死なないようにとは手を抜いたが、途中で諦めていれば腕の一本くらいは落ちていただろう」
腕の一本くらいではそう簡単に死ぬものではない。
鋼糸の切れ味を考えれば痛みは最小限で済む。切断面も荒れず再接合も容易い。止血くらいならば鋼糸で仮繋ぎや焼けば問題ない。失血性のショック死の心配もない。
レイフォンの様子は見た目だけなら満身創痍だ。薄皮は切れ何箇所も血は滲んでいる。服の切れ目からも傷跡が薄らと見える。
最後まで全力で恐怖に駆られ動き続けたからこの程度で済んだのだ。
「何故お前だけ怪我をしているのか分かるか? 煙草を吸っていただけの無傷の男と必死で逃げ回った傷だらけのガキ。何故そんなに違うのか言ってみろ」
レイフォンの頭に乗せた足の力を少し強める。その足を退けられるだけの力さえレイフォンには戻っていない。
息も絶え絶えになりながらレイフォンは一度口を閉じ、一拍して苦しそうに口を開く。
「し、ししょー……が、ぼく……ぼくより、ずっと、つよいから」
「その通りだ」
乗せていた足をどける。
「お前とはそれだけ力量が違う。子供と大人などという現実としての差ではなく、比喩でもなく、それ以上の絶対的な差があるからだ。そしてこれはそのまま武芸者と非武芸者にも言える」
寝ているレイフォンの上に再度鋼糸を展開する。
何百何千何万。数多の鋼糸がレイフォンの頭上数センチに網を張りその鋒を向ける。
小石を蹴り飛ばすような気まぐれでレイフォンは死ぬ。仰向けになりレイフォンは自分に向けられた今にも降り注ぎそうな凶器の雨を見る。
「逃げていたお前が非武芸者でお前の姉だ。武芸者と非武芸者の間には大きな開きがある。武芸者がその気になれば容易く殺される。逃げるのは嫌だったかレイフォン?」
レ
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