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IFのレギオス そのまたIF
糸刻み 追
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立て、レイフォン」
 
 レイフォンの歳ならば仕方のないことだ。レイフォンの環境ならば無理ないことだ。
 そして今ここにいる人間もそれを真っ当に教えられるそれではない。
 だから、立ち上がり見上げてくる視線を受け、半ばまで灰になった煙草を噛み締め呟く。

「レストレーション」

 何時も片方の錬金鋼は復元している。
 だからこれはパフォーマンスだ。確かに錬金鋼を復元したのだと。何をするのかを理解させるためにもう片手の錬金鋼をレイフォンの目の前で復元させる。
 小さな光が宿り錬金鋼の組み込まれた手袋に手が覆われる。
 複雑な衣装が施されたそれを、示すように前に出す。

「レイフォン。お前の何が悪かったのか教えてやる」

 不思議そうに見ていたレイフォンの瞳。
 それが大きく見開かれる。

「煙草を吸い終わるまでの一分弱。全力で逃げろ」

 レイフォンが大きく後ろへ飛び跳ねる。十分に扱えるようになった活剄で強化された足で脇目も振らず地を蹴る。
 それは意識しての事ではなく反射的な動き。目前に染まった恐怖から逃げるためにレイフォンの足は動いていた。
 先程までレイフォンがいた場所には大きな傷跡が刻まれていた。
 鋭い刃物が振り下ろされた様な一本の斬線。逃げていなければレイフォンの腕は間違いなく切り落とされていた。
 
「し……っ!?」

 事態が理解できていないレイフォンは自らの師に問おうとし、それを見て絶句する。
 有ったのは空間一面に張り巡らされた鋼糸。一本でさえレイフォンを殺すには十分なそれが数えることがバカバカしいと思える程の数で犇めいていた。
 レイフォンの全身を叩くのは隠すことなく剥き出しにされた剄の圧力。レイフォンのそれとは比べるのも気が遠くなるほどの絶対的な量を有した剄が空間を支配していた。
 その剄が動く。疑問を挟む余地もなく犇めく鋼糸がレイフォンめがけ殺到する。

 鋼糸の網は庭をドーム状に覆っていた。レイフォンは外に逃げることを許されず向う断頭の刃を必死で避けていく。
 一秒と止まることを許されず、一瞬と視線を逃すことを許されず、刹那も意識を切ることを許されず。
 差を測ることすら許されぬ程の実力差があるのにレイフォンが鋼糸の海を避けられたのはその操り手の意識が全力と遠いところにいたから。
 日々の訓練の中で足蹴にしたりなど多少は動き回らせていたことがあったのもその一因だろう。

 それでも数多の鋼糸はレイフォンの力量を超えていた。
 息をするのも躊躇するほどに全力で、全身の筋肉の疲労を無視し、訓練を遥かに超えるほど剄脈を働かせレイフォンは動く。
 全身が上げる悲鳴を本能からの恐怖でねじ伏せトップスピードで避け続ける。
 それでも取りこぼしは出る。
 鋼糸が触れ
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