糸刻み 追
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ーを出し手で壁を作り着火する。咥えた煙草をその火に近づけようとし、傷だらけのライターを見てふと思い出す。
『お父さん何だから子供に変なとこ見せないでくださいね』
かつて己の父が母に言われた言葉だ。
父親は煙草を吸う武芸者だった。趣味程度でそう吸う人ではなかった。反対に母は煙草を嫌っており、子供の前で吸う父親をそう嗜めることが度々あった。悪影響だと思ったのだろう。
事実、その子が最初に煙草を吸ったのは父親の影響だ。
ある日テーブルの上に忘れられていた半分残った箱と使い捨てのライター。ふと手にとったそれが最初だったのだから。
子は周囲の影響を受ける。
それは親であり兄や姉であり或いは師や友人。
普通の武芸者というのは歳を重ねるうちに周囲の世界や常識を知る。
或いは同じ武芸者である親の背を見てその行いを教えられる。言葉だけではなく日常の中でだ。
技術を教える時間を持つ一方、精神面を日常で培わせる。
そうやって共に成長させていくのだ。
レイフォンはそういった日常での、精神的な物を育てる時間や基準を与える存在がいない。
母親と姉は非武芸者。本当の親は恐らくだが死んでいる。
その状況で技術だけを与えたらどうにもならない。だから今回のこれはきっと、いずれ起こる事だったのだろう。
現状下で影響を受けるだろう武芸者がいるとすれば己くらいだろう。そしてそれは真っ当という場所からはかけ離れている人間だ。
本当に安請け合いをしてしまったものだ。
「母親には何て言われた」
「……もうしちゃいけないって。そのちからはそんなことにつかっちゃいけないんだって。ねえさんをまもるためにあるんだって」
「まあ、間違いではないな」
かといって完全な正答でもないが。
最もそんな事を言ったところで何が正しいのか明確な言葉で歴然と語れる人間もいないのが事実でもある。
「今更だがその義姉は大丈夫だったのか」
「うん。ゆるしてくれた。いいよって」
問題ないならば良し。
だがそのことについて後日、原因の一人としてはメイファーの方には何か言っておくべきだろう。
本来ならばここでレイフォンに気の利いた言葉でも言うべきなのだろう。
正義だ倫理だ道理だ思いやりだなどと。
だが生憎と己はそんな歯の浮くような言葉をペラペラと吐けるような人間ではない。
「レイフォン。何が悪かったのか、それを分かっているか」
「うん。ぼくはぶげいしゃなのに、がまんできなくて、りーりんにけがさせたからおかあさんはおこった」
レイフォンは理解しているようには見えなかった。
前に言われたことだから。親に言われたことだから。親に怒られたから。
だから駄目なのだと、そう理解している。
「
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