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第一章

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 マニラのバーにおいてだ。何人かがあれこれと話をしていた。
 それぞれの手にバンドの楽器を持ってだ。まだ開店もしていない静かな店の中で席を囲んでだ。そうして話をしているのだった。
「それで次はな」
「あの曲か」
「ああ、ラブミーテンダーな」
 プレスリーの名曲だ。あまりにも有名な曲である。
「それ歌おうぜ」
「で、それからだよな」
「スリラー演奏するか?」
「いや、サーフィンUSAだろ」
 アメリカの曲が続く。
「他にはどれがいい?」
「グーニーズの主題歌な」
 今度は映画だった。
「それなんかどうだよ」
「女の歌でもか」
「まあいい曲だしな」
「じゃあそれでいいか?」
「それも歌うか」
「やっぱりあれだよ」
 彼等の中の一人が言った。背が高く痩せている。目が強く光っている。肌の色はここに集まっている面々は全てそうだが褐色だ。フィリピン人の肌だ。
「アメリカだよな」
「だよなあ、やっぱり」
「アメリカの曲が一番だよ」
「まあ歌う言葉はタガログ語だけれどな」
「それでもな」
 言語はそれだがというのである。
「やっぱりアメリカだよなあ」
「アメリカのロックにポップスな」
「それが一番だよな」
「全くだぜ」
 こう言ってだ。彼等はアメリカの音楽文化を追い求め演奏し歌っていた。彼等の音楽はそこそこ人気があった。それは確かだった。
 しかしだ。店でも道でコンサートを開いてもだ。こう言われるのだった。
「そのままだよな」
「ああ、アメリカの歌のままじゃないか」
「歌も演奏も上手いけれどな」
「それでもな」
 聴く者達はいぶかしみながらこう言うのであった。
「大体バンド名もな」
「そのままじゃないか」
「何だよ、ザ=ワンダーって」
「あの黒人の歌手か」 
 スティービー=ワンダーだ。アフリカ系の盲目の歌手である。
「あの歌手の名前そのままだよな」
「あの歌手の歌も歌うし」
「コピーバンドか?」
「それじゃあな」
 どうかというのである。その言葉は。
「今一つだな」
「ああ、もっと独創性ないのかね」
「アメリカばっかりじゃな」
「どうにもな」
 こうした評価だった。しかしである。
 当の彼等はだ。意に介さずに活動を続けていた。
「アメリカが一番凄いんだぞ」
「だったらいいだろ」
「なあ」
「それでいいだろ」
「アメリカが最高なんだよ」
 まさに崇拝だった。アメリカ文化への崇拝は彼等の音楽だけでなくファッションや食事にも出ていた。当然髪型もである。
「どうだよ、この髪型」
「ああ、いいな」
「似合ってるぜ」
「よくやったよ」
 メンバーの一人が髪型を変えると皆それを褒め
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