第二章
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第二章
猪場といえばやは絶対のヒーローである。日本のプロレス界における英雄の一人だと言っても過言ではない。
それに対してグライシーはまさに悪漢だ。そうとしか思えない。その二人の対決になると猪場には声援、そしてグライシーにはブーイングだと思われた。しかしだ。
その対決がはじまるとだ。観客席のファン達はだ。
馬場だけでなくグライシーに対しても暖かい声援を送る。そうしていたのだ。
彼はそのことに驚いた。それが信じられなかった。それでだ。
誘ってくれたプロレスファンを見る。見れば彼の顔は。
優しい笑顔になっていた。そして温かい目をしている。そのうえで試合を観ているのだ。
他の観客達もだ。誰もがそうした笑顔、目になっている。そしてそれは。
グライシーもだった。馬場に対してとても温かい目になってだ。そのうえで彼と戦っていたのである。まさにその目はであった。
心ある優しい者だけができる目であった。彼はその目を見てだ。わかったのだ。
グライシーは本当は悪人ではないのだ。悪役レスラーというポジション、そしてそのファイトからそう言われるだけでだ。実は善人、非常に心優しい人だったのだ。彼はそのことを今わかった。
それがわかるとだ。彼はだ。
何故誰もグライシーを悪く言わないのか、そして声援を送るのかわかった。彼のことを知っているからだ。
それから彼はグライシーについていぶかしむことはなくなった。そして彼についてこう言うのだった。
「グライシーさんは素晴らしい人です」
これは多くのプロレスファンが言う言葉だ。悪役レスラーといってもだ。その素顔は非常に心優しい人物だったのである。
悪役じゃない 完
2011・4・6
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