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『第三十五話』〜夕方の買い物〜
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 拓斗side

「さてと、次は……」


 ある日の夕方、俺は買い物をする為に街に出ていた。


「……はぁ」


 何故か……大人の姿で。





回想





 学校から帰ってきて早めに夕食をすませようと、調理してた時。


「あ、そうか。塩切らしてたんだったな」


 塩を取ろうとしてようやく、切らしてた事を思い出した。


[そう言えば昨日使いきってたな]

「覚えてたなら教えろよ」

[いや、今思い出したんだよ]

「トリガーのメモリーにあるだろうが……」


 しかし困ったな。今は料理の途中だし……


「ウォーリアを呼び出して……」

[無理だろ。それ以前にこんなことに魔法使うな!]

「やっぱ?」

[当たり前だろ!]


 だよな……


「仕方ない、買いに行くか。他にも買いたい物あるし」


 そう呟きながら玄関に向かう。


[拓斗、ちょっと待て]


 が、ソウルにそれを止められた。


「どうした? 他になんか切らした物あったか?」

[そうじゃない。もし出かけるんだったら変身魔法でも使って大人になっとけ]

「は? 何で?」

[何でもだ。とにかくさっさとしろ]


 理由がわからない。なんで買い物するだけで変身魔法なんてしないといけないんだ?


[お前……以前補導されかけた事あるだろうが。もう忘れたのか?]

「あ……」


 ソウルの言うとおりだ。去年か一昨年あたりに出歩いていたら補導員に声をかけられてしまった事がある。


「あれは平日の昼間に出歩いていたからであって、今の時間なら別に平気じゃないか?」

[それだけじゃない。また捕まるぞ?]

「捕まる? ……あぁ、あの蟻の大群か……」

[蟻って……ただの記者共じゃねぇか。せめて人間扱いしてやれよ………]


 俺が『月夜の歌姫』だと雑誌に載ってから、俺の周りは結構変わった。
 学校ではクラスメートによく話しかけられるようになり、他のクラスだけでなく他の学年の生徒まで俺に話しかけ、しまいには音楽教師が歌姫のファンだったらしく歌の授業のときには必ずと言っていい程に一人で歌わされるようになった。

 家や学校の外に出ればテレビ局や雑誌記者、芸能事務所のスカウトマンがわんさかと集まり勝手にカメラを回したり、取材したいとか歌手にならないかと迫ってくるのだ。

 学校の事はまだ大丈夫だ。しかし外の連中はダメだ。
 どこまでもしつこくついてくるし、しまいには周りにいるなのは達や士郎達にまでしつこく付きまとうのだ。
 アイツ等は常識などといったモノを知らないのか?



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