番外編 朱糸眼の過去
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僕は、普通じゃなかった。
普通の子供じゃなかった。
だから母親は僕を恐れたし、父は異形のものを見るような目で僕を見た。
小学校。
誰とも関わらないようにした。人と関わると、碌なことがないから。その人の強さ、心、精神状態――そういった物が、この普通でない"眼"に見えてしまうから。
それでも、俗に低学年と呼ばれるころは、人に馴染もうと努力した。自分の眼のことをひた隠しにして、普通の子供として、普通の人間として過ごそうとした。
それは、無駄な努力だった。どう頑張っても、僕の眼は人の心を映し出す。鮮明で、それでいて残酷に。
それから僕は、人を避けるようになった。自分から避けているのに、無能な教師どもは「斥本君を仲間はずれにしないであげて」などとのたまき、どうでもいいくせに僕へと「大丈夫よ、いじめられても先生だけはあなたの味方だから」などと嘯いた。その心は、とても面倒そうだった。
中学校。
気を使わないでいい、ほとんど会話のないグループに入った。いじめる事も、いじめられる事もないグループに。グループに入ったのも、小学校のころの反省を生かしただけで他意はないし、できれば自分の眼を潰してしまいたい――という衝動も、変わりなく心の奥底にこびりついていた。
校則はゆるい学校だったが、さすがに前髪を伸ばすことは禁止だったので、後ろ髪を束ねた。
そして、その頃は何をするのも面倒臭かった。体育祭も文化祭も、クラスマッチも修学旅行も全て。その全てが、面倒臭かった。
高校。
比較的整った顔立ちのせいで女子が鬱陶しくまとわりつき、面倒臭くなったので前髪を極端に伸ばした。まあ、結果は散々だったが。
そのスタイルが斬新だと女子どもは更に増え、それを妬ましく思った男たちは、なぜか僕をいじめた。いじめなんて高校生がするものじゃないと思うのだが、相当ガキくさかったのだろう、お前のせいで彼女に振られただの地毛の茶髪が鬱陶しいだの何やかやと言いがかりをつけて来る輩には、正直言ってうんざりしていた。
鬱陶しいのはどちらだと考えてみても、それを口に出して更なる怒りを買うのは得策ではない。
そう思って放っておくと、次第につまらなくなったのかいじめは減っていった。相変わらず、女どもはうるさかったが。
すべてが面倒臭くなっていた高校3年の夏、僕は叶壊に遇った。
とにかく叶壊は何でも出来て、尊敬すべき人で、何よりも――心が視えなかった。
そんなことは初めてで、でも心を見なくてもいいことが純粋に嬉しくて、僕は叶壊と行動するようになった。男だから変に気を使わなくていいし、女どもみたいにうるさくないから、鬱陶しくなることもない。
そう思って、叶壊と行動した。
それから4,5年たって、叶壊が「コレクション
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