第一章
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第一章
ザリガニキング
草加力弥の趣味はザリガニ釣りである。そしてザリガニを飼うことだ。
ザリガニを釣っては飼っていきしかも捨てることは決してしない。ザリガニに対して、他のもの全体に対してそうだが彼は博愛主義者である。だからザリガニを捨てたりすることはしない。それで彼はそれこそザリガニを百匹は飼っている。正確な数は彼にもわからない。
両親はそんな彼に呆れてはいるが世話はちゃんとしているのとそのうえザリガニの餌なぞ大した額にはならないのでいいとしている。割り切って考えれば子供にとって実にいいペットである。
そのザリガニ達はどれも赤い。ザリガニといえば赤いのが当然であるがとにかくどれも赤いのだ。
とはいっても彼はそれを当然と思いおかしいと思ったりはしない。
しかしだ。そのザリガニ達の中にだ。
突如金色のザリガニが出て来た。これを見てだ。
まず彼の両親達が驚いた。それでそのザリガニを見世物にしようとした。しかし力弥は両親に対してこう言うのである。
「ただ色が違うだけなのに見世物にすることないじゃない」
「いや、金色のザリガニだぞ」
「そんな珍しいものを見世物にしないでいいの?お金が」
「お金なんていいし。だからただ金色なだけじゃない」
彼は両親に素っ気無く言う。何とでもないようにだ。
「それだけじゃない。しかも他のザリガニと引き離して見世物にするなんて可哀想だよ」
「可哀想」
「そう言うの」
「そうだよ。このザリガニは他のザリガニと同じだよ」
こう言ってである。実際にその金色のザリガニを他の赤いザリガニ達の中に入れてだ。そうしてそのうえで同じように飼うのであった。
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