ターン2 鉄砲水と変幻忍法
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、先輩」
そう言って、デュエルの間に邪魔にならないようどけておいたビニール袋を持ってくる葵。持ってくるのは一向に構わないんだけど。
「えっと、これなんだっけ?」
「へ?先輩、忘れたんですか?アンティですよ、ア・ン・ティ。自分から言い出したんじゃないですか」
「………おお!」
「本気で忘れてたんですね。ただ、先輩の口に合えばいいんですけど」
はて、今何やらおかしなセリフが聞こえたような。ドローパンなんて元から博打みたいな食べ物だし、それに対して口に合うかどうかなんてこと言うのは無粋極まりないことだってのをこの子には一回教えておいた方がいいのかもしれない。
そう思って口を開こうと思った矢先、そういえば言い忘れてましたけど、と葵が言い出した。
「それ、中身はドローパンじゃないんですよ。私が趣味で作ってみた、ただの丸パンです。まだ修行中ですから、あまりうまくできてはいないと思いますけど」
「なるほどねえ。じゃあちょっと失礼」
少なくとも見た目はなかなかいい感じに焼きあがっているように見えるそれを1つ取り出し、ためしにちょっとかじってみる。
「あ、美味しい」
「本当ですか?お世辞ならそう言ってくださいね、その方が私のためになりますので」
そんなことを言っているが、こちとら食べ物に関してだけはお世辞なんてもの言うつもりは全くない。単純に美味しいものならそう言うし、不味いものなら遠慮なくそう言わせてもらう。だけど、その丸パンは中のもっちり具合といいパリッとした外の皮といい、かなりレベルの高い代物だったのだ。
…………ふむ、これはちょうどいいかもしれない。
「ねえ、ものは相談なんだけど」
「はい、なんでしょうか」
「この宵闇は返すからさ、そのかわりに1つ頼みたいことがあるんだけど」
「はい?」
それから数日たって、ある日の放課後。遊野洋菓子店に注文されたもののリストを片手に調理室に向かうと、そこにはエプロン姿の葵がすでに立っていた。こういうこと言ったら今の世の中怒られるかもしれないけど、エプロン姿の女の子ってのはやっぱりいいなあ、なんてことをふと思う。夢想も頼み込んでみたら案外OKしてくれるかも………いややっぱ無理だ、着てくれるかもしれないけど僕みたいなへタレにはまずそれを彼女に頼むところが無理だ。
「先輩、遅いですよ。もうこっちのシナモンクッキーは生地の仕込みを始めてるんですから」
「ごめんごめん、追試が難しくて」
「またですか?まったく、本当に座学の苦手な先輩ですね」
「実技ができれば問題ない!」
「言い切らないでくださいよ」
何があったかを簡潔に説明すると、入学したてでまだ部活にも入っていない彼女を遊野洋菓子店の店員としてスカウトしたのだ。最初
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