決戦4
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さいね」
コーネリアは初めて、小さく微笑を浮かべた。
それは安堵――だが、敵にとっては戦乙女の慈悲の笑みであったかもしれない。
一瞬で死を告げる死の笑みに。
+ + +
高度を下げた爆撃機が、敵陣を蹂躙していく。
もはや敵に戦意はない。
早くも幾台かが撤退をしようとして、爆撃機のナパームに焼かれていた。
頼みの対空部隊すらも初撃で撃ちとられれば、敵にとっては爆撃機を防ぐ手立てはない。
ただ逃げる。
逃げ惑う兵士に向けて、追撃を指示しながら、アレス・マクワイルドは立ち上がった。
「少尉。休んでいてください――あとは我々が片付けます」
「いや。そうもいかない。行く場所がある」
「どこに?」
そう問われて、アレスはどこだろうなと苦笑して、視線を後方の山道へと向けた。
おそらくはあそこしかない。
赤毛の少年が近くにいないいま、おそらく彼は。
これから敵が再度進行をかけることは考えづらい。
指令部への通信は、労いの言葉と感謝と共に任務解除の命令が与えられた。
敵の再攻撃は考えられず、あったとしても残留部隊で何とかするつもりなのだろう。
実際に攻撃と共に左右の塹壕から、中央を守るように命令を受けた兵が集結していた。
後方に下がって、酒を飲んでもいいとは大奮発だろう。
もっともそれに見合う働きを、アレス達中央部隊は行ったのだが。
「通信機は持っていく。何かあれば連絡を」
「これ以上手柄を取られたくはないな。風呂にでも入って、ゆっくりしてくれ」
引き継ぎに来た小隊長と冗談を交わして、アレスは部隊の方へ戻る。
そこには短時間ながらも命を預けた精鋭の姿がある。
就任した当初のような掃溜めと呼ばれる事もない。
おそらくはカプチェランカで――同盟軍でも有数の陸上部隊だ。
それが静かにアレスの言葉を待っている。
任務は終了した。
だが。
「もう一働きを頼んで良いか」
呟かれた言葉に、部隊が眉をあげた。
しかし、誰も否定の言葉をあげない。
代表するように、バセットが一歩前に出た。
「少尉」
「ああ。これは俺の我儘だ。別に戻ってくれても」
「違います。我々はマクワイルド少尉の部下なのです。頼みなどという言葉は要りません。少尉はただ命令をくれれば良いのです」
「いや。正式な任務ではないから……」
「命じてください」
表情を輝かせて、バセットがアレスを見る。
到着時の挑戦的な瞳から変わって、どことなく御主人に構ってもらえる事が嬉しいような犬を思い出させた。
もっとも子犬などという可愛いものではなく、敵に対しては牙をむく恐さがあるが。
「わかった。確証はないが、敵の動きからこちらの逃走ルートに
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