決戦4
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空砲火を気にせずに撃ちこめる。
思えば、ロイツにとっても、そしてこの爆撃機にとっても苦渋の日々だった。
爆撃機は敵陣に攻撃を仕掛ける事が仕事。
だが、カプチェランカの劣悪な環境がそれを許さず、下手をすれば一回も爆撃しないで、この爆撃機はお役御免を迎えたかもしれない。
ロイツも同様に。
無駄死には御免だ。
だが、そのために今まで幾人もの兵の死を見てきた。
もっと早く来てくれればと、味方から罵声を浴びることもある。
自分だって戦いたかった。
そんな叫びは心にしまわれ、諦めすらもロイツは感じていた。
このまま爆撃機と共に朽ちていくのだろうと。
しかし。
近づく大地を見れば、倒れ伏す同僚の姿が見える。
そして、顔をあげて希望を浮かべる味方の姿もだ。
「みんないったよな。もっと早くきてくれって。後ろで楽してただろうって。でもな、でもな」
呟いた言葉は次第に大きくなる。
自らの押し籠めてた気持ちを吐露するように。
「俺だって悔しくないわけがないだろう。同期が、友達が戦場にいるのに、何も出来ず後ろでずっと指をくわえて……ふざけんな」
投下ボタンに手をかけて、ロイツは前方――雲霞のごとく群がる帝国兵を見た。
唇を噛んで、ボタンを押しこんだ。
+ + +
雲を抜けて、目に入ったのは帝国兵から基地を守る同盟軍の姿だ。
白い大地が赤く染まり、倒れる兵が幾人も見えた。
アレスは無事だろうか。
間に合ったと思うのも一瞬、倒れる兵士の髪を見る。
視線が彷徨えば、すぐに首を振った。
あのアレス・マクワイルドが死ぬわけがない。
きっと今も、あの敵対するものを恐怖させる笑みをどこかで浮かべているはずだ。
だから、コーネリアは視線を前に戻して、敵を睨んだ。
予想通り対空砲の数は少ない。
これならば。
「いける」
呟いた瞬間、爆撃機から二筋の煙が飛び出した。
隣席の副操縦士が投下ボタンを押したのだろう。
それは踵を返した帝国兵に追いついて、赤が視界を染めた。
千度を超えるナパームの炎だ。
敵陣に広がり、全てを焼き尽くす。
前線に殺到していた兵士達は一撃で過半数が炎に包まれた。
逃げ惑う。
悶える兵士の姿を目に焼き付けて、コーネリアは思う。
逃がすものかと。
爆撃機が敵の上空を一周して、機首を変える。
続いて投下されたナパームが、敵の後方――わずかばかりに抵抗をしていた対空砲を焼き尽くした。
もはや爆撃機を止めるものはいない。
高度を下げたコーネリアの目に、見えた。
左目に包帯を巻きつけて、小さく笑う同僚の姿を。
はっきりと。
遅いと愚痴っているのだろうか。
「ごめんな
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