決戦4
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き消して、再び指に力を込めた。
音がした。
足を止めて、キルヒアイスは戦場の真ん中で空を見上げる。
立ち止まったキルヒアイスを追いぬいて、兵士達がかけていく。
それにも関わらず、ただキルヒアイスは空を見ていた。
音だ。
戦場に鳴り響くは、砲弾の放たれる咆哮と着弾音。
それらの背後に兵士の悲鳴と声が響いていた。
それだけではない。
耳をすませたキルヒアイスには、それにプラスして風を切る甲高い音を聴いた。
それが何であるか。
理解は一瞬――キルヒアイスは突撃する帝国兵とは逆走して走りだした。
「下がれ!」
+ + +
キルヒアイスが手を止めて、アレスも塹壕から顔を隠して、空を見る。
銃声が断続的に響く音しか聞こえない。
帝国兵の足音は大きくなり、ついには防戦ラインの百メートルをきる。
そこで、アレスの耳にもおそらくは赤毛の少年が聞いたであろう音が聞こえた。
甲高く風をきる高音のエンジン音。
遥か上空――雲を切り裂く、爆撃機の音。
「全員、頭を下げて塹壕にもぐれ」
指示を出して、アレスは一人塹壕に背をかけて、ゆっくりと腰を下ろす。
厚い曇天が空を隠している。
遮るもののないアレスの右目に、曇天を切り裂く爆撃機が見えた。
「……遅い」
静かに呟きながら、アレス・マクワイルドは小さく息を吐いた。
+ + +
曇天を切り裂いて、巡航艦ラフロフ編成の爆撃機が飛び出した。
操縦席から眼下を見て、副操縦席のロイツ中尉は驚きに目を開いた。
それは隣席の同僚――ミシェル・コーネリアの操縦技術が一つ。
飛べると言っても惑星カプチェランカの気候は厳しい。
ロイツも腕が悪いと思ったことはないが、この暴風では目的地まで真っ直ぐ進むことは出来ないだろう。しかし、コーネリアは最短距離で接敵している。
そして、もう一つ。
曇天を切り裂いて敵陣が広がっても、予想された敵の砲撃はなかった。
単発的こそ対空砲が向かうが、部隊展開がされていなければ、避けることは容易い。
ましてや、コーネリアの腕である。
こちらに向かうミサイルを避けて、爆撃機は疾走した。
敵が間抜けすぎて、対空部隊を編成しなかったのか。
あるいは、兵数からこちらを見くびっていたのか。
そんな考えが浮かぶが、ロイツは隣席のコーネリアを思い出し、苦笑した。
マクワイルド少尉。
彼の名前が出て、コーネリアは敵の対空部隊を問題ないと言いきった。
ならば、彼がどうにかしたのだろうか。
劣勢でありながら、とても信じられないことだ。
もっとも、そのような真実はロイツにとってはどうでもいいことだ。
ただ爆撃機が飛び、敵の対
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