自称王と他称王
一話
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起きてからだ。
「んじゃ帰っていいスか?」
すぐ帰りたい、と顔からでも読み取れたティアナは苦笑しながら頷くとアレクは即座に席を立ち、出て行こうとする。
「もう遅いし送って行くわ。ご両親にも説明しなくちゃいけないし」
「いえいえ、一人で大丈夫です」
「でも一人で行って戻ってくると結構時間が掛かるわよ」
「いえいえ、大じょ……行って戻ってくる?」
ティアナが許可したのは一時帰宅である。自称とはいえ覇王と関係ありそうなアレクを放っておくことはまだ出来ない。アレクがただのクラスメイトと主張しても。
それを分っていないらしいアレクに説明すると、盛大に崩れ落ちた。ただのクラスメイトを称するにはオーバーなリアクションである。
なのでティアナの頭から、ただのクラスメイトという線は消えた。同時に、覇王と縁があるというよりも、個人的な関係の方が大きいかも、と思いもしたが。
◆ ◇ ◆
意識が覚醒すると共にアインハルトは飛び起きた。
「よう、起きたか。自称、覇王イングヴァルト。んで、本名アインハルト・ストラトス?」
声のした方を向けば、すぐ隣に寝っ転がるノーヴェが目に入った。此処は何処か、何故名前を知られているのか、起きた直後でまだ理解が追い着かない。
「ノーヴェ、あの子は起きた?」
「おーう、起きてるぞ」
ノックの後、ティアナ・ランスターと名乗る女性が入ってきた。
そして執務官と紹介されると身を硬くするが、「ほら、アンタも入ってきなさい」と促された者は見知った顔だったので幾分だが解れた。
だが、常日頃から自分を欺いた上に、仕舞いには痴女呼ばわりされた。流石にアインハルトも怒りが湧く。
「アレディ・ナアシュ……」
アインハルトの呟きに疑問顔が二つ、睨む顔が一つ出来上がる。
疑問顔の二人は睨み合う視線を何度か行き来させ、疑問顔の一人のノーヴェは頼んだとティアナを見た。
「アレディ・ナアシュって、なに?」
先ずティアナは呼ばれた方にターゲットを決め視線を向けるが、アレクは語らない。
このまま黙秘権を使用するのであるならば、とティアナは呼んだ方に視線を向けた。
「貴女は話してくれる?」
「はい」
「ちょ、ま――――」
「貴方は黙ってなさい」
ティアナはアレクの口を塞いで黙秘権を酷使させ、アインハルトに視線を向けた。
アレディ・ナアシュとは古代ベルカに生きた王の一人。
その王が治める国の在り方は異色。他国と争うだけではなく、国内でも争っていた。王とは一番の強者であり、その称号を勝ち取らんとする為に。
そして、戦い方もまた異色。戦える事を喜びとし、その中で死ねる事を幸せとする。対峙したものは誰も人と思わない在り方だった
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