暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
戦王の使者篇
10.緋色の狩人
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───種のコンピュータ・ウィルスだな。名付けて『おわりの言葉』ってところか』

「で、それを母機のコックピットの中に音声ファイルを流し込めば止まるらしい」

 雪菜が海へと視線を向ける。海底から自己修復を終えた大型古代兵器が、這い上がってきたところだった。

「あのでかいやつの中に入る……って、どうやって? 集中砲火の餌食だぞ。せめてあいつらの動きを止めないと──」

 現在は、彩斗と古城の眷獣が防御に回ってナラクヴェーラたちの攻撃を防いでいる。

「ナラクヴェーラの動きは、私が止めるわ、雪菜」

 長い髪を美しく揺らして、紗矢華が前に歩み出た。

「煌坂?」

「わかってるわね、暁古城、緒河彩斗。敵がこちらの攻撃を解析して進化するっていうなら、チャンスは一度きりよ。私と雪菜の足を引っ張ったら灰にするからね」

 紗矢華が、剣を握ったまま左手を前に突き出した。
 突如として、剣は銀の強靭な弦が張られた新たな武器へと姿を変える。

「──弓!?」

「洋弓だな」

 紗矢華の剣は、美しきアーチを描く銀色の弓に変わっていた。
 自らのスカートをたくし上げた彼女は、太腿に巻いていた革製のホルスターから、金属製のダーツを取り出した。それが彼女の手の中で伸びて銀色の矢に変わる。

六式重装降魔弓(デア・フライシュツッ)。これが“煌華麟”のほんとうの姿よ──」

 流れるような美しい仕草で矢がつがえ、力強く引き絞る。

「──獅子の舞女たる高神の真射姫が讃え奉る」

 紗矢華が祝詞を口にする。

「極光の炎駒、煌華の麒麟、其は天樂と轟雷を統べ、噴焔をまといて妖霊冥鬼を射貫く者なり──!」

 紗矢華が銀の矢を放った。
 大気を引き裂く甲高い飛翔音が響いた。
 これが煌華麟の真の力。戦場全体に鳴り響くような鏑矢の呪文は、半径数キロメートルに達する巨大な不可視魔法陣を描き出した。
 そこから生み出された膨大な“瘴気”が古代兵器に降りそそぎ、彼らの機能阻害する。

「先輩!」

 雪菜が、銀の槍を閃かせて駆け出した。
 その背を追って、彩斗と古城も疾走った。
 神々の兵器が耐えきれないほどの瘴気を浴びれば普通の人間、吸血鬼といえど耐えきれないだろう。
 だが、その瘴気を受けてなお女王ナラクヴェーラはその機能を失っていない。降り注ぐ瘴気を戦輪の爆発を利用してある程度無効化したようだ。

「──くそっ!」

 古城が雪菜の背を追いかけながら声を洩らす。

「大丈夫ですよ、先輩。わたしたちの勝ちですよ」

 雪菜は勝利を確信したように笑みを浮かべ、彩斗と目を合わせる。
 彩斗もこのときを待っていたと言わんばかりの表情を浮かべる。駆ける足を止め、彩斗は鮮血を噴き出
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